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変わる時代 二人の行方

評・南沢奈央(女優)

◇あさい・りょう=1989年生まれ。作家。2013年、『何者』で直木賞受賞。著書に『武道館』『何様』など。
◇あさい・りょう=1989年生まれ。作家。2013年、『何者』で直木賞受賞。著書に『武道館』『何様』など。

 私は最近、出演しているNHKの落語番組で、YouTubeの話題が積極的に取り上げられることに意外性を感じていた。とは言え私自身もネットで落語をることが多く、確か番組を始めた昨年の春頃は、「動画配信サービス」と表現を濁すよう言われていたはず……。新しい流れに乗りながらも、私はまだ古いルールの中にいたのだと今回気が付いた。

 世の中の物すごい速度の変化に必死で追いつくように、あらゆる場所で変化が起きている。テレビや映画と、ネットの動画。プロとアマ。様々な境界線がなくなり、多様な価値観が渦巻く今を描いたのが、まさに本書だ。

 著者は明言している。本作のテーマは「変化する時代と、質と価値」。大学時代に映画祭でグランプリを受賞した尚吾と紘が、卒業後にそれぞれ真逆の進路を選ぶ。「本物の実力を持った、本物の映画監督になりたい」尚吾は、名監督のもとに弟子入りをする。紘は、「自分がかっこいいと感じたものをかっこよく撮る」べく、尊敬するボクサーを撮影し、YouTubeで発信することに。

 自分の作った映像を次々発信し、多くの人の目に触れている紘の活躍を横目に、自分の映像は一つも世に出せていないもどかしさ。一方の紘も、質よりも量を求められ、違和感を感じる。それぞれ、やりたいことと求められることのギャップに煩悶はんもんする。質の良ししは誰が決めるのか。揺るがない価値はあるのか。「この世界のどこを踏みしめれば自分の足で立つことができるのか」。

 とことん一つのテーマを突き詰める一冊。だが読者に渡されるのは答えではなく、問いだ。シロでもクロでもなくグレーを描き出しているが、最後は二人の目の前のもやが晴れている爽快感は見事。踏み出す一歩に自信がみなぎる。きっと晴れた空には自分の星が見つけられるだろうという予感が、私たちの背中も押してくれる。

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使い方
1660874 0 書評 2020/11/29 05:00:00 2020/12/07 11:25:39 「スター」(16日、読売新聞東京本社で)=橘薫撮影 https://www.yomiuri.co.jp/media/2020/11/20201128-OYT8I50039-T.jpg?type=thumbnail

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