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デジタル化する新興国 伊藤亜聖著 中公新書 820円

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◇いとう・あせい=1984年生まれ。東京大准教授。専門は中国経済論。著書に『現代中国の産業集積』など。
◇いとう・あせい=1984年生まれ。東京大准教授。専門は中国経済論。著書に『現代中国の産業集積』など。

世界を変える可能性

評・篠田英朗(国際政治学者 東京外国語大教授)

 膨大な情報が凝縮されて内蔵されている書だ。デジタル化という最先端の領域で、いま世界で何が起こっているのか。次々と豊富なエピソードで教えてくれる。著者の多角的な情報収集と冷静な整理に舌を巻く。

 「新興国」に焦点があてられる。ただし、著者は、そもそもデジタル化が「新興国」と「先進国」の「定義自体を変容」させているとも指摘する。本書は、中国やインドなどのアジアの先進的な大国を主に論じつつ、アフリカの「デジタル新興国」の事例なども豊富に紹介する。そして従来の見方ではとらえきれなかった新興国の「可能性と脆弱ぜいじゃく性」を描き出す。

 現代世界のインターネット・ユーザーの7割以上が伝統的な先進国ではない非OECD諸国にいる。「開放型工業化、閉鎖型デジタル化戦略」の中国に対し、インドは「閉鎖型工業化、開放型デジタル化戦略」をとるなどの違いも見せながら、「デジタル新興国」は、先進国を「飛び越え」る形で発展を遂げている。この動きは、各国において大きな社会変動をもたらし、さらには監視国家化、フェイク(偽)ニュース、テロリストが用いる兵器などの様々な面での変化も引き起こしている。中国企業は、信用取引の困難を克服するプラットフォームの開発で拡張し、米中覇権争いの行方にも影響を与える。かつて「農村から都市を包囲する」戦略にもとづいた共産主義の輸出を図っていた中国共産党が、中国のデジタル領域での影響力の拡大を通じて、いよいよ先進国を包囲しようとしているという著者の示唆は、特に衝撃的だ。

 日本のデジタル化は遅れている。そこで著者は、「新たな試行錯誤の現場」であるアジアやアフリカの「新興国のデジタル社会にアンテナを張り、関わっていく」べきことを強調する。日本の強みをかして、デジタル化の時代にも、「手を動かし」「足を使って」体験することが大切だ、という著者の洞察が、鋭い。

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1678347 0 書評 2020/12/06 05:00:00 2020/12/14 10:37:30 「デジタル化する新興国」(30日、読売新聞東京本社で)=橘薫撮影 https://www.yomiuri.co.jp/media/2020/12/20201205-OYT8I50044-T.jpg?type=thumbnail

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