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ミラクル・クリーク アンジー・キム著 ハヤカワ・ポケット・ミステリ 2200円

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本年ベスト級の傑作

評・宮部みゆき(作家)

◇Angie Kim=韓国生まれ。11歳の時に両親と米国へ移住。弁護士を経て2019年に本書で長編作家デビュー。
◇Angie Kim=韓国生まれ。11歳の時に両親と米国へ移住。弁護士を経て2019年に本書で長編作家デビュー。

 バージニア州郊外の町ミラクル・クリークで、高気圧酸素供給療法の施設が放火され、施術中だった一人の少年と、子供に付き添っていた女性が焼死する。やがて死んだ少年の母親エリザベスが逮捕され、一年後に裁判が開かれる――。

 ハヤカワ・ポケミスのお馴染なじみ上下二段組みで四九一ページ、法廷ミステリにして正統派のフーダニットである本書は、この裁判が始まるところからお話がスタートする。無駄も隙もない構成、思わせぶりな細工も一切なし、一直線の「犯人は誰だ」ものなので、内容に踏み込んでご紹介できないが、本年ベスト級の傑作だ。

 高気圧酸素供給療法とは、通常の三倍の気圧のなかで純酸素を供給することにより種々の疾病や身体の機能障害を治療するという趣旨のもので、もちろん代替医療である。本書のなかで「潜水艦サブマリン」と呼ばれる特別なカプセルを用いてこれを行っているのは、韓国人移民のユー一家、パクとヨンの夫婦と一人娘のメアリーだ。パクは妻子を先に米国に送り、自分は母国で働いて送金し、年に一度海を渡って妻子に会うガンパパ(渡り鳥のガンのような父親)の暮らしを乗り越えて、ミラクル・クリークの町で新しい人生のスタートを切ったばかりだった。しかし離れていた年月は家族のあいだに溝を刻み、ヨンは将来の不安におびえ、アジア人差別に悩むメアリーは韓国に帰りたがって父親と衝突する。

 一方、一般的な医療では回復が望めず、奇跡の代替医療にすがろうとする「患者」たちの側も、不妊治療に向き合う夫婦の葛藤や、発達障害や病気による後遺症で介護が必要な子供をケアする母親の心身の深い疲労など、様々な問題を抱えている。フーダニットでありながら、被告人エリザベスも含めた主要な(つまり疑わしい)関係者の多視点で語り、個々の心情と秘密を交錯させつつ、悲劇と浄化とささやかな救済のある真相へと収斂しゅうれんさせてゆく著者の迷いのない手つきは、素晴らしいの一言に尽きる。服部京子訳。

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1697232 0 書評 2020/12/13 05:00:00 2020/12/21 11:24:07 「ミラクル・クリーク」(30日、読売新聞東京本社で)=橘薫撮影 https://www.yomiuri.co.jp/media/2020/12/20201212-OYT8I50042-T.jpg?type=thumbnail

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