読売新聞オンライン

メニュー

ニュース

動画

写真

スポーツ

コラム・連載・解説

発言小町

漫画

教育・受験・就活

調査研究

紙面ビューアー

その他

サービス

読売新聞のメディア

購読のお申し込み

読売新聞オンラインについて

公式SNSアカウント

ホッキョクグマ 北極の象徴の文化史 マイケル・エンゲルハード著 白水社 12000円

メモ入力
-最大400文字まで

完了しました

漂白された北極熊伝説

評・三中信宏(進化生物学者)

◇Michael Engelhard=米アラスカ大で文化人類学を学ぶ。アラスカで野生ツアーガイドと執筆活動に従事。
◇Michael Engelhard=米アラスカ大で文化人類学を学ぶ。アラスカで野生ツアーガイドと執筆活動に従事。

 先日、酷寒のカナダ北極圏で懸命に生きるホッキョクグマ母子の生態をレポートしたあるテレビ番組を見る機会があった。生まれたばかりの子熊2頭を連れて北に向かう母熊に過酷な自然環境と狂暴な雄熊が相次いで襲いかかる。ネイチャーものの定番であるハッピーエンドな台本に安らぎを覚えつつ気になる点があった。ホッキョクグマはアザラシを主食とする。その番組でも氷上でアザラシが狩られる場面が映されたが、不思議なことに、雪と氷に覆われた真っ白な大地を真っ赤に染めたはずの“血の海”の光景は注意深く消し去られていた。そう、ホッキョクグマという純白の偶像には“血”の汚れはふさわしくないのだ。

 本書は地上最大の肉食動物であるホッキョクグマの文化史を描く大著だ。高緯度の北極圏に生きる彼らだが、最古の“白い熊”の記録は『日本書紀』にあるそうだ。当時からその希少性が取り沙汰されていたホッキョクグマの毛皮は、北極海を取り巻く国々にとって重要な交易品として高い価値をもつようになる。本書に所収されている白熊猟を描いた数多くの絵画は、一方ではホッキョクグマの“獣”としての荒々しさを印象づけ、他方では極北のシンボル動物としての“聖性”をも強調することになった。

 その後ヨーロッパの動物園やサーカス団では生きたホッキョクグマを目にする機会が増えた。今世紀はじめ、ベルリン動物園の白熊“クヌート”の物語は、ある飼育員によって献身的に育てられた“愛らしい”ホッキョクグマの子熊として一躍世界的に有名な文化的アイドルに祭り上げられた。そして数年後に飼育員が亡くなり、その後を追うようにクヌートも病死したことで彼らは不可侵の伝説となっていった。

 いまなお進む地球温暖化により消えゆく北極圏の雪氷はそこに生きるホッキョクグマの生存を脅かしている。虚像と実像のはざまに生きてきた彼らのすべてが本書にある。山川純子訳。

無断転載・複製を禁じます
1697240 0 書評 2020/12/13 05:00:00 2020/12/21 11:23:27 「ホッキョクグマ」(30日、読売新聞東京本社で)=橘薫撮影 https://www.yomiuri.co.jp/media/2020/12/20201212-OYT8I50044-T.jpg?type=thumbnail

ピックアップ

読売新聞購読申し込み

アクセスランキング

新着クーポン

NEW
参考画像
お買い上げ金額から10%OFF
NEW
参考画像
1ドリンクサービス(お一人様1杯)
NEW
参考画像
1,000円以上お買上げの方に「とうきび茶」プレゼント
NEW
参考画像
「ふぞろいの牛タン・切り落とし」一品プレゼント!
NEW
参考画像
ファーストドリンク一杯無料

読売IDのご登録でもっと便利に

一般会員登録はこちら(無料)