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海をあげる 上間陽子著 筑摩書房 1600円/地元を生きる 岸政彦、打越正行、上原健太郎、上間陽子著 ナカニシヤ出版 3200円

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沖縄 声なき声を聞く

評・橋本倫史(ノンフィクションライター)

◇うえま・ようこ=1972年、沖縄県生まれ。琉球大教授。著書に『裸足で逃げる』など◇きし・まさひこ=1967年生まれ。立命館大教授。
◇うえま・ようこ=1972年、沖縄県生まれ。琉球大教授。著書に『裸足で逃げる』など◇きし・まさひこ=1967年生まれ。立命館大教授。

 沖縄で女性たちの聞き取り調査を続ける上間陽子が、初めてのエッセイ集を刊行した。

 タイトルは『海をあげる』。鮮やかな青色で描かれた装画は、きれいな沖縄の海を想起させる。葬儀のあとに海に入る風習。海の向こうにニライカナイ(沖縄の言葉で「理想郷」)があると語る母。園庭で水遊びをするこどもたち。水の流れをたどるように、「沖縄での美しく優しい生活」を読み進めると、きれいだった海が赤く濁る。その日――辺野古に土砂が投入された日――を境に言葉を失った著者が、自分の中に残るかすかな声を探るように文をつづる。

 辺野古と聞けば、多くの読者は「ああ、基地問題か」と思うだろう。「基地問題」として物事を考えるとき、そこに暮らすひとりひとりの生活は、なかったことのように扱われてしまう。あまりにも切実な現実を前に、声をあげることができなくなった人たちは、存在しなかったことにされてしまう。そんな人たちの声を、著者はどうにか聞き取ろうとする。

 かろうじて紡ぎ出された言葉に、どう向き合えるだろう。わたしたちは、自分が当事者にならない限り、誰かの痛みを共有することはできないのだろうか?

 上間陽子も共著者として名を連ねる『地元を生きる』は、沖縄社会の多様性を描きだす社会学的エスノグラフィだ。これまで一面的に語られてきた「沖縄的共同性」を、階層とジェンダーの視点を導入することで、それぞれ異なる距離感で「地元」を生きるひとびとの生活を綴る。

 教員、公務員、飲食業、建築労働者、セックスワーカー。膨大なフィールドワークによって記録された、さまざまな境遇に生きる個人の生活史から、社会の輪郭が浮かび上がってくる。

 社会を生きるわたしたちは、書き記された言葉を通じて、誰かの生活を、そこにある痛みを想像できるはずだ。

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1697243 0 書評 2020/12/13 05:00:00 2020/12/21 11:23:35 書評(7日、読売新聞東京本社で)=大石健登撮影 https://www.yomiuri.co.jp/media/2020/12/20201212-OYT8I50045-T.jpg?type=thumbnail

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