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ロヒンギャ危機 中西嘉宏著

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中公新書 968円
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軍・警察改革へ関与提唱

評・飯間浩明(国語辞典編纂者)

 ミャンマー国軍による集団虐殺を逃れ、ロヒンギャと呼ばれる人々が数十万人規模の難民となって国外に流出している。その報道に愕然がくぜんとしたのは2017年のことでした。

 少数民族を差別し、迫害を加える。そんな愚かなことはやめるべきだ。指導者アウン・サン・スー・チー氏はなぜ解決に動かないのか。国軍を抑える力がないのだろうか。それにしたって――。

 本書を読みつつ、当時から感じていたもやもやがよみがえりました。ロヒンギャ問題は、歴史、民族、宗教などの要素が複雑に絡み合っていて、単純に国際社会が圧力をかければ解決できる、というものではなさそうです。

 ロヒンギャは、主としてイギリスの植民地時代、現在のバングラデシュからミャンマー西部の州に移り住んできた人々です。仏教国のミャンマーでは、イスラム教徒の彼らは差別され、国籍を与えられず、脅威とみなされてきました。

 皮肉にも、民主化が進んだ10年代、当局の抑えが利かなくなり、ロヒンギャ武装勢力の活動が激しくなりました。17年8月、国軍は彼らの掃討を開始します。子どもを含め、無関係な住民が多数殺害されたといいます。

 本書が出版された、まさにその直後、ミャンマーではクーデターが起こり、現在も兵士が市民に銃を向けています。情勢は新たな段階に移り、ロヒンギャ問題は忘れ去られたかのようです。でも、治安部隊が幼い子どもを銃撃したというニュースを聞くと、問題はつながっていると感じます。

 著者は、ロヒンギャ問題の解決のため、日本政府の関与を提唱します。難民への人道支援など5項目のなかで、私が特に注目したのは、国軍・警察の能力開発に関与すべきだという提案です。

 ロヒンギャ危機の背景には、治安当局の能力や財源の不足、長年引き継がれてきた慣習などがあると、著者は指摘します。人材育成や人的交流などに日本が関与することで、組織を内側から変えていく。簡単ではなさそうですが、前向きな提案だと受け止めました。

 ◇なかにし・よしひろ=1977年、兵庫県生まれ。京都大東南アジア地域研究研究所准教授。専門は地域研究・比較政治学。

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1959565 0 書評 2021/04/04 05:00:00 2021/04/04 05:00:00 ロヒンギャ危機=泉祥平撮影 https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/04/20210403-OYT8I50041-T.jpg?type=thumbnail

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