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「ちがい」がある子とその親の物語I アンドリュー・ソロモン著 海と月社 2200円

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◇Andrew Solomon=米国生まれの政治、文化、心理学の研究、著述家。著書に『真昼の悪魔』など。
◇Andrew Solomon=米国生まれの政治、文化、心理学の研究、著述家。著書に『真昼の悪魔』など。

多様性のあり方問う

評・仲野 徹(生命科学者・大阪大教授)

 先天性の疾患により、一生「ちがい」を持って生き続けざるをえない人がいる。そういった人やその親たちは、「ちがい」をどのように受けとめ、折り合いをつけていくのだろうか。

 ろう、骨・軟骨の形成異常による低身長症、ダウン症のケースが数多く紹介されているが、個々の「病とアイデンティティー」の物語は大きく異なっている。それどころか、親子で受容の仕方が違うことすらある。一方で、登場する家族のほとんどに「避けられるものならなんとしても避けたいと思うような経験を、最終的にはありがたく思うようになった」という、にわかには信じがたいような共通点がある。

 多くのろう者は、聴覚障がいを欠如ではなく実在と感じているという。だから手話の世界は、「ろう者以外の人々の文化よりもずっと、心と体が密接に結びついている」文化であり生き方なのだ。しかし、今、その「ろう文化」は衰退する運命にある。最大の理由は医学の進歩だ。

 人工内耳により、ろうの子どものかなりが口話者として生活できるようになる。素晴らしいことである。だが、手放しで喜んでいいのかという疑問が呈される。そこには「人間集団の標準化は称賛に値する進歩の印なのか、それともうわべだけをとりつくろった優生学にすぎないのか」という問題があるというのだ。さらに、その決断が親に委ねられるという問題もある。

 ろう社会ほど大規模ではないが、低身長症とダウン症にもそれぞれの社会がある。いずれの疾患も出生前診断などにより減少していく可能性が高い。かくして、多様性を確保すべきだという世の趨勢すうせいに反し、これらの「ちがい」による多様性は衰退を余儀なくされている。

 先天的な遺伝性疾患の研究は、生命科学の研究に大きく貢献してきた。それと同じように、この本において語られるさまざまな物語は我々の社会のあり方に対して大きな示唆を与えてくれる。依田卓巳、戸田早紀、高橋佳奈子訳。

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1959570 0 書評 2021/04/04 05:00:00 2021/04/12 16:38:35 「ちがい」がある子とその親の物語I=泉祥平撮影 https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/04/20210403-OYT8I50042-T.jpg?type=thumbnail

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