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福島原発事故10年検証委員会 民間事故調最終報告書 アジア・パシフィック・イニシアティブ著 ディスカヴァー・トゥエンティワン 2750円

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縦割り 失った想像力

評・苅部 直(政治学者・東京大教授)

◇アジア・パシフィック・イニシアティブ=2017年に既存組織を改組し発足した非営利の独立系シンクタンク。
◇アジア・パシフィック・イニシアティブ=2017年に既存組織を改組し発足した非営利の独立系シンクタンク。

 十年前に始まった福島第一原発事故に関しては、政府(内閣官房)と国会、さらに東京電力と日本原子力学会に、その原因や対応のあり方について調査・検証する委員会が置かれ、詳細な報告書がおのおの発表されている。だがその後の十年間、政府や東電の方針に、報告書の提言がどれだけ生かされたのか。その点を検証するため、やはり調査報告書をかつて刊行した民間のシンクタンクであるアジア・パシフィック・イニシアティブ(API)が、科学技術政策、安全保障、災害情報論などの専門家を集め、詳しい検討の結果をまとめたのが本書である。

 原発事故の後始末に関する政策の現状について、著者たちの評価はきわめて厳しい。たしかに原子力規制委員会が設置されて、原発の管理に関する政府の権限が強められた。しかしたとえばある原発は、事故の発生に備えて配備する消防車の数を大幅に増やしたものの、場所の分散を考えていないという。上から課された「宿題」を済ませることばかりに集中して準備したせいだろう。

 行政と企業の組織に見られる縦割りのしくみや、上意下達の風習を温存したまま、「小さな安心」の確保にばかり努めた結果、国家全体にかかわる「大きな安全」を考えるための想像力を失ってしまった。それが原発事故の遠因にほかならないと著者たちは指摘する。現在もその病理は生き続け、新型コロナウイルスへの対策をめぐる混乱に、まざまざと現れている。

 APIの理事長である船橋洋一がまとめた、原発事故に関するノンフィクションの改訂版、『フクシマ戦記』上下巻(文藝春秋)も同時に刊行された。十年の間に明らかになった事実を確認するためには、こちらも併読するのがふさわしい。福島という地域の将来と、原子力発電の存続をめぐる議論は、今後も続くだろう。それを一人ひとりが考え続けるために、ぜひ読んでほしい仕事である。

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1977072 0 書評 2021/04/11 05:00:00 2021/04/19 12:54:05 書評・福島原発事故10年検証委員会 民間事故調査最終報告書(4日、本社で)=沼田光太郎撮影 https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/04/20210410-OYT8I50048-T.jpg?type=thumbnail

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