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アニメーションの女王たち ナサリア・ホルト著 フィルムアート社 2860円

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夢作る現場での差別

評・飯間浩明(国語辞典編纂者)

◇Nathalia Holt=1980年生まれ。ノンフィクション作家。著書に『完治』『ロケットガールの誕生』。
◇Nathalia Holt=1980年生まれ。ノンフィクション作家。著書に『完治』『ロケットガールの誕生』。

 アニメは無数の人々の協力で完成するもの。関わった人々の名が作品に刻まれるのは当然です。でも、昔のウォルト・ディズニー・スタジオでは、それが当然ではありませんでした。著者が描くのは、夢を作る仕事場で、女性たちが偏見や差別に苦しみ、闘ってきた軌跡です。

 1935年、女性初のストーリーアーティストとして入社したビアンカ・マジョーリーは、男性たちにののしられつつ、ハラスメントの中で仕事をします。「ピノキオ」では人物造形に貢献しますが、彼女の名は作品にクレジットされませんでした。アニメ現場での女性活躍を報じる新聞記事も、彼女を匿名としました。

 ウォルト・ディズニーに賞賛されていたコンセプトアーティスト、メアリー・ブレアも例外ではありません。男性たちからは嫉妬され、新聞のレビューでは名前に触れられません。私生活でも夫にDVを受けていた彼女はついに退職に至りますが、後を引き継いだ男性は<彼女の倍の給料を受け取っていた>といいます。

 本書は400ページを超える本であり、語られるのは女性スタッフの苦難ばかりではありません。ディズニーアニメ自体が技術をどう革新してきたか、表現技法や人物描写をどう工夫してきたかにも筆が割かれます。そして、その変革には多く女性が関わっていたことも。

 21世紀、女性スタッフは個人として注目を集めるようになります。ブレンダ・チャップマンは「メリダとおそろしの森」で、ジェニファー・リーは「アナと雪の女王」で、それぞれ監督を務め、見事オスカーの栄誉に輝きます。

 昔のアニメならば、これで「めでたし」となりそうです。ところが、現状を見ると、ハリウッドのアニメーターのうち、女性は23%にとどまるのだそうです。私たちの隣に、今も苦闘する多くのビアンカやメアリーがいます。ディズニーアニメの約80年を眺めるうち、自分たちの足下に気づかされます。石原薫訳。

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2037910 0 書評 2021/05/09 05:00:00 2021/05/17 16:33:27 アニメーションの女王たち(16日、東京都千代田区で)=飯島啓太撮影 https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/05/20210508-OYT8I50044-T.jpg?type=thumbnail

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