読売新聞オンライン

メニュー

AI・兵器・戦争の未来 ルイス・A・デルモンテ著 東洋経済新報社 3300円

メモ入力
-最大400文字まで

完了しました

人間を殺す「知能」の行方

評・加藤聖文(歴史学者、国文学研究資料館准教授)

◇Louis A.Del Monte=物理学者、作家。長年ナノテクノロジーの開発に従事。著書に『人類史上最強 ナノ兵器』など。
◇Louis A.Del Monte=物理学者、作家。長年ナノテクノロジーの開発に従事。著書に『人類史上最強 ナノ兵器』など。

 不気味な話だ。今や家電から自動車、ゲームにいたるまで私たちの生活はAIに囲まれている。といっても、まだ人間に使われる機械の延長であって、便利の域をでない。しかし、2050年までにAIは人間の知能と同等になる可能性が50%、さらに2070年には人間の認知能力を超える「シンギュラリティ」が予測されている。となると、人間の知能を超えたAI(超絶知能)が自ら思考し、人間と対立することも起こりうるのだ。

 第二次世界大戦後、世界は民生技術が急速に進歩し、変化も早い。民生技術を軍事が取り込み戦争に応用することが当たり前になった。なかでもAIの活用は、無人偵察機やドローン、サイバー攻撃など広範囲におよび、小国でも低コストで効率的な軍事力を持つことを可能にした。そうしたなかで、シンギュラリティを迎えたAI兵器(全能兵器)はどのようなものが出現するのか?

 日本では人知を超えたAIはドラえもんのような人間臭いキャラクターとなりがちだが、海外ではターミネーターのような非人間的なキャラクターというのが相場だ。現実も残念ながら人間が人間を殺す戦争からAIが人間を殺す戦争へと変わって、戦争の不条理さは極限に達する。平和を求めて戦争反対を訴えるのは相手も人間だから意味があるが、感情を通わすことのできないAI相手では無力だ。

 そんな恐ろしい未来が予測されるAI兵器だが、世界の流れは米中露のような軍事大国からテロ集団にいたるまでAI化に歯止めがかからない。そして戦場はインターネット、さらには宇宙空間にも広がり、今や平時と戦時の区別がつかなくなっている。ハイテク先進国からデジタル後進国になり下がった日本は、リスクとスピードがすべてのAI戦争に取り残されてしまった。それが幸か不幸かは分からないが、これまでの戦争観を見直す必要に迫られていることは確かだ。

 AI社会の未来にまで踏み込んだ本書は、私たちが数十年先に起こりうる現実に余りにも無知であることを教えてくれる。川村幸城訳。

 

無断転載・複製を禁じます
2104385 0 書評 2021/06/06 05:00:00 2021/07/21 11:47:12 AI・兵器・戦争の未来(28日午後5時9分、東京都千代田区区で)=木田諒一朗撮影 https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/06/20210605-OYT8I50047-T.jpg?type=thumbnail

ピックアップ

読売新聞購読申し込み

読売IDのご登録でもっと便利に

一般会員登録はこちら(無料)