読売新聞オンライン

メニュー

日本で働く 外国人労働者の視点から 伊藤泰郎、崔博憲編著 松籟社 2860円

メモ入力
-最大400文字まで

完了しました

受け入れ側の驕り 危惧

評・小川さやか(文化人類学者、立命館大教授)

◇いとう・たいろう=長崎県立大教授◇さい・ひろのり=広島国際学院大教員。専門はマイノリティー論。
◇いとう・たいろう=長崎県立大教授◇さい・ひろのり=広島国際学院大教員。専門はマイノリティー論。

 2018年、出入国管理及び難民認定法が改定され、日本は大幅な外国人非熟練労働者の受け入れへと かじ を切った。だがメディアで取りざたされる通り、外国人労働者や技能実習生に対する扱いは決して望ましいものではない。

 本書は、外国人労働者たちがいかなる思いを抱いて日本にやって来たのか、彼らと彼らを送りだす社会の目に日本社会がどのように見えているのかを基軸に、外国人労働者をめぐる問題を多角的に問う論集である。

 4部構成で、第1部では、外国人労働者に関する制度的な変遷や、外国人労働者が支える食品産業、建設業の問題が議論される。第2部は、技能実習生とその送り出し国の事情、そして彼らが日本や日本での労働にむけるまなざしがテーマとなる。以下、第3部では、過疎化農村と日系ブラジル人学校との関係や、困難な暮らしをする日系フィリピン人にとっての家庭菜園の意味を論じ、第4部では、園芸産地で季節労働をする外国人や在日アフリカ人など、さらに周縁的な外国人労働者の実情を扱う。スコープを変えながら議論が展開されるのだ。

 本書を通じて実感することは、何よりも日本の人々の認識のゆがみである。外国人労働者に対する「嫌なら国に帰ればよい」という発言は、既に彼らなくして回らなくなっている日本の社会経済的な構造も無視している。門戸を開放したら外国人が殺到する等々の懸念や危惧とは裏腹に、外国人労働者からみて日本は「選ばれる」出稼ぎ先ではなくなりつつある。戻ってきて欲しいと願う日本の会社や農家が存在する一方で、客観的に諸々の条件を勘案して日本へ戻ることを拒む外国人労働者たちも多々いるのだ。外国人を社会の外部として排除したまま労働力として調達する技能実習制度をはじめ、自分たちは「受け入れている側」という日本社会の おご りとそれに基づいて構築された制度を根本的に考え直させてくれる本である。

無断転載・複製を禁じます
2120360 0 書評 2021/06/13 05:00:00 2021/07/26 16:26:02 日本で働く 外国人労働者の視点から(28日午後5時12分、東京都千代田区区で)=木田諒一朗撮影 https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/06/20210612-OYT8I50046-T.jpg?type=thumbnail

ピックアップ

読売新聞購読申し込み

読売IDのご登録でもっと便利に

一般会員登録はこちら(無料)