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エレジーは流れない 三浦しをん著 双葉社 1650円

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温泉街 高校生の日常

評・南沢奈央(女優)

◇みうら・しをん=1976年、東京都生まれ。作家。著書に『風が強く吹いている』『光』『愛なき世界』ほか。 温泉街高校生の日常
◇みうら・しをん=1976年、東京都生まれ。作家。著書に『風が強く吹いている』『光』『愛なき世界』ほか。 温泉街高校生の日常

 三浦しをんさんの約3年ぶりとなる新作長編は、温泉街に暮らす男子高校生たちの日常を描いた青春群像劇。海と山に囲まれた「 餅湯もちゆ 温泉」という場所が物語の舞台になっている。名前から受ける印象の通り、あたたかくて、ゆるい。かつては関東近郊から客がやってくる一大リゾート地だったが、現在は全盛期ほど旅行客が来ず半睡状態である。

 そんなのどかでさびれた町で育った主人公・ れい は、「なるべく静かに穏やかに日常を重ねていきたい」と願う、青春小説の主人公には珍しいタイプ。さらに、夢も将来の展望もない。何かあると無難な道を選んでしまうことに 悶々もんもん と悩みながらも、「餅湯温泉のぬるたい湯に かっているほかなさそう」という結論に至ってしまう、とても親近感の湧く人物だ。つい自分の高校時代を思い出してしまう。

 だが、実は抱えている家庭の事情は複雑なものだ。母親が二人いて、両方の家を行き来しながら生活しているが、父親はいない。理由を聞けずにいた怜も、ある出来事をきっかけに真実に向き合っていくことになる。さらに、餅湯博物館では縄文式土器が盗まれる事件が起きる――。

 「迷惑のかけあいが、だれかを生かし、幸せにすることだってありえる」。平穏な生活に波風が立ったことで、当たり前のようにいた母親や、普段はバカばかりやっている友達、さり気なく近くにいた商店街の人々が、どれだけ頼もしい存在なのかということに気づく。笑いありの軽快なテンポの文章の中でも、人とのつながりのあたたかさを感じさせる場面がぐっと胸に刺さる。

 読み終えたときには、この餅湯温泉という町も、町に生きる人々もみんな いと おしく感じられる。アーケードで流れる「もっちもっち、もちゆ~」というBGMを聴きながら、その後のみんなに会いに行きたい気分である。

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使い方
2231701 0 書評 2021/07/25 05:00:00 2021/08/03 12:17:15 書評7月25日付け用(8日、東京都千代田区で)=高橋美帆撮影 https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/07/20210724-OYT8I50028-T.jpg?type=thumbnail

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