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就職と体育会系神話 大学・スポーツ・企業の社会学 束原文郎著 青弓社 2640円

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運動部有利か 就活考察

評・稲野和利(ふるさと財団理事長)

◇つかはら・ふみお=1977年生まれ。京都先端科学大准教授。専攻はスポーツを対象にした人文社会科学
◇つかはら・ふみお=1977年生まれ。京都先端科学大准教授。専攻はスポーツを対象にした人文社会科学

 体育会系運動部の学生でなければ巡り合うことのなかった接点を契機に、本書にもN證券という表記で登場する会社に評者が入社したのはもう45年も以前のことだ。これは体育会系神話だったのだろうか。本書は「体育会系神話」(体育会系の新卒就職は他に比して有利になるという社会的了解)の生成過程から 紐解ひもと き、統計データから現状を観察し、大学新卒労働市場で体育会系神話が成立する条件を解明する。

 神話の起源は大正時代に遡る。企業でのスポーツ奨励、学力偏重主義への反省などから、次第に神話は確立していった。体育会系就職の最盛期は1980年代から1990年代初頭だ。本書ではインタビューを通じてその頃の具体的事例を知ることができ大変興味深い。その後、日本的雇用慣行の存在、企業スポーツの変容、少子化などの環境変化によって、文脈依存的な体育会系神話は変質する。

 2000年代以降、大学の体育会系運動部員は顕著に増加する。神話により運動部人気が高まったということではない。大学の供給過剰とも言える状況の中、定員充足率と補助金が連動するルールの下で中堅以下の大学が定員充足のためにスポーツ推薦を活用した結果なのだ。本書では、「ノンエリート体育会系」と称されるこの集団と従来からの「エリート体育会系」の分化が指摘され、体育会系神話が成立する条件として、「威信(ランク)が高い大学」の野球・ラグビーなど「伝統的チームスポーツ」部に所属する「男性」という類型が提示される。

 就職戦線での優位性獲得を目指して運動部に入部する学生はいないだろう。所属するだけで達成されることは何もない。企業も運動部という外形性だけに着目して採用を行うことはない。著者が説くように、学生にとっては「所属したクラブをよりよくするために、全身全霊で活動に取り組む経験」こそが重要なのであろう。神話は一部に存在しているに過ぎないのだ。

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2359728 0 書評 2021/09/12 05:00:00 2021/09/21 10:25:41 https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/09/20210916-OYT8I50012-T.jpg?type=thumbnail

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