『プロレス社会学のススメ コロナ時代を読み解くヒント』斎藤文彦、プチ鹿島著(集英社) 2090円

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リング 現実社会の縮図

評・川添愛(言語学者・作家)

◇さいとう・ふみひこ=1962年生まれ。プロレスライター◇ぷち・かしま=1970年生まれ。「時事芸人」。
◇さいとう・ふみひこ=1962年生まれ。プロレスライター◇ぷち・かしま=1970年生まれ。「時事芸人」。

 コロナ禍ですっかり「無観客」が定着したが、今から30年以上前に無観客イベントを成功させた業界があるのをご存じだろうか? また、近年批判されることもある政治報道と同じ構図を、昭和の時代に体現していた業界はどこか? 答えはどちらも「プロレス界」である。

『僕の狂ったフェミ彼女 (原題)나의 미친 페미니스트 여자친구』ミン・ジヒョン著(イースト・プレス) 1760円

 本書はプロレスと時事問題に精通した二人による対話集だ。タイトルの「プロレス社会学」という学問が明確にあるわけではなく、話題の中心はあくまでプロレスである。にもかかわらず、それが現実社会のさまざまな課題へと自然につながっていくのは、プロレスが社会の縮図だからなのだろう。

 読んでいて驚かされるのは、プロレスが時代を先取りしている事例が少なくないことだ。先述の「無観客イベント」とは、アントニオ猪木とマサ斎藤の「巌流島の戦い」のことで、インターネットも無い時代にもかかわらず、しっかりと収益を上げていたという。

 プロレスにおいては選手・団体・メディアの思惑が複雑に絡み合うため、実際に何が起きているかが見えないことが多い。著者たちは日本やアメリカのプロレスの歴史を丁寧に ひも きながら、対立構造を利用したイメージ戦略や選手の自己プロデュース、団体とメディアの共犯関係、団体の生き残りを賭けた かじ 取りなど、ビジネスや政治にも通じる事例の数々を浮き彫りにする。プロレス的手法があからさまに政治に持ち込まれるようになった昨今、本書が教えてくれるリテラシーと批評精神は万人に必要なものと言えるだろう。

 プロレスは、現実社会の ゆが みや理不尽さが露骨に表れる場でもある。そういった中で女性やマイノリティーの立場がどのように変わってきたかという話題も非常に興味深い。従来のプロレスファンにもそうでない人々にも、社会とプロレスに対する新たな向き合い方を示してくれる良書である。

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2937706 0 書評 2022/04/22 05:20:00 2022/04/22 05:20:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2022/04/20220418-OYT8I50061-T.jpg?type=thumbnail

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