『日米中枢9人の3.11 核溶融7日間の残像』太田昌克著(かもがわ出版) 1980円
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国家危機 緊迫の証言
評・堀川惠子(ノンフィクション作家)

福島の原発事故直後には取材できなかった日米中枢の9人を、10年がかりでしぶとく捉えた。証言から浮かび上がるのは「東日本壊滅」すら想定された事故後7日間の緊迫である。
グレゴリー・ヤツコ米原子力規制委員会(NRC)委員長の証言は強烈だ。自国民保護に動くアメリカは、日本政府の初動に
日本に派遣されたNRCチャールズ・カストー。原子炉建屋が爆発した現場に「仮に核兵器が使われても、これほどのダメージを引き起こすものか」と
日米の不信がとけるきっかけは、陸上自衛隊による上空からの放水。暴れる原子炉に蓋をする「英雄的行動」を誰もが求めていた。防衛省の廣中雅之(統合幕僚監部運用部長)は「彼らは戻ってこないかも」と悲壮な覚悟で隊員を送り出す。
福島が最後の事故になると考えるのは間違い、とは冒頭のヤツコの警告。有事を制御する人知には限界がある。想定を超える国家の危機にいかに備えるか。過酷事故の教訓がぎっしり詰まった本書は、核問題の取材歴30年の著者