ヤンキーと地元 打越正行著 筑摩書房 1800円/ドライブイン探訪 橋本倫史著 筑摩書房 1700円

メモ入力
-最大400文字まで

完了しました

共有する土着の物語

 ◇評・鈴木洋仁(社会学者・東洋大研究助手)

 土地と人生の関係をふりかえる2冊だ。

 『ドライブイン探訪』は、ライターの橋本倫史が、「今のうちに記録しておかなければ」と、全国を訪ね自費出版した雑誌をまとめた。

 ドライブインは「クルマをめて休憩することのできる」施設で、昭和30年代に急増する。「クルマ」というカタカナ表記は「アメリカが遠かった時代」の輝きを色濃く反映している。今も当時でもドライブコースではなさそうな、渋谷スクランブル交差点そばの大盛堂書店に、ドライブインが作られる。それほど、自動車=米国は日常から離れた珍しいものだった。

 だからこそ、逆に、日本全国に点在するそのひとつひとつに、その土地だからこそ営まれてきた人々の物語が刻まれている。アメリカ由来の文化を土着に組み込んできた歩みが、橋本による丁寧な聞き取りを通して語られる。

 ドライブインがたたずむ国道は、しかし、同時に地元にとどまる若者のまり場にもなる。

 沖縄を走るゴーパチ(国道58号線)にいた、「ヤンキー」と呼ばれる若者たちの十年以上の記録が、『ヤンキーと地元』に結実している。

 著者の打越正行は、社会学者としての調査を彼らの「パシリ」(使い走り)から始める。「調査地で実際に体験したことの記録」としての参与観察により、彼らとの信頼関係を築く。

 打越にとって彼らの世界は「魅力的」に映るものの、「きびしい現実が待ち受けている」。「キセツ」と呼ぶ内地(本土)への出稼ぎは、各地を転々とせざるを得ない。かといって、沖縄に戻ってきたとしても「しーじゃ〔先輩〕とうっとぅ〔後輩〕」の暴力を伴う上下関係から逃げられない。地元の人間関係が、いつまでも人生を左右する。それが沖縄だ。

 コンビニが全国を網羅し、風景は均一になって久しい。ドライブインとヤンキーが共有する土地に根ざした物語が失われつつある今、この2冊が運ぶ生の声に耳を傾けたい。

 ◇はしもと・ともふみ=1982年生まれ。ライター◇うちこし・まさゆき=1979年生まれ。琉球大非常勤講師。

無断転載禁止
578199 0 短評 2019/05/12 05:00:00 2019/05/20 13:29:21 2019/05/20 13:29:21 書評(3日、東京都千代田区で)=横山就平撮影 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/05/20190511-OYT8I50039-T.jpg?type=thumbnail

おすすめ記事

アクセスランキング

読売IDのご登録でもっと便利に

一般会員登録はこちら(無料)
ページTOP
読売新聞社の運営するサイト
ヨミダス歴史館
ヨミドクター
発言小町
OTEKOMACHI
元気ニッポン!
未来貢献プロジェクト
The Japan News
美術展ナビ
教育ネットワーク
活字・文化プロジェクト
よみうり報知写真館
読売新聞社からのお知らせ