大統領とハリウッド 村田晃嗣著 中公新書 860円

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支持される物語を求め

 ◇評・森健(ジャーナリスト・専修大非常勤講師)

 二十数年前、米大統領が主役級の映画が続いた。「インデペンデンス・デイ」では宇宙人と、「エアフォース・ワン」ではテロリストと大統領が戦う。過剰な演出と映ったが、米国では大統領と映画の関係は思った以上に深い。

 本書は米国の外交史に詳しい著者が、米大統領とハリウッド映画との関係、描き方を100年間にわたって読み解いたものだ。

 1960年代、「若くセクシーで理想主義的なエリート」のケネディが大統領に就任すると、ハリウッドは大統領人気にあやかり、大統領を神格化するような作品づくりを志向した。

 69年、ニクソン大統領が就任。ベトナム戦争の泥沼化とウォーターゲート事件で「悪のイメージを刻印」された彼は多くの映画で悪役として描かれた。そのせいか、70年代は「暗殺や盗聴、陰謀を扱った作品が多」かった。

 81年就任のレーガンは俳優出身。もともと「銀幕の大統領」だった。映画好きだった彼は、映画の強みも知っていた。再選を前にレーガン陣営は「ロッキー」の監督兼主演のスタローンに接触。その後製作された続編「ロッキー4」はソ連の選手と戦って勝つ内容だった。

 クリントン時代には大統領が登場する映画が多数作られるようになった。陰謀や犯罪のテーマもあったが、多くが私的なスキャンダルをベースにしていた。クリントン自身がセクハラで弾劾だんがい裁判に直面したためだろう。

 ブッシュ親子、オバマ、トランプと現代まで項は続き、参照される映画は250本以上。カーターやブッシュ父のように、映画としてほとんど描かれなかった大統領もいるが、それを解く鍵は民主主義のようだ。

 著者は映画と民主主義には共通点があると言う。「多数によって作られ、多数の支持を必要とし、イメージを操作し、そして、物語を必要としている」。そんな視点から読み進めると、米国の政治史もおもしろく読める。

 ◇むらた・こうじ=1964年生まれ。同志社大教授。2013~16年に同大学長。専門はアメリカ外交など。

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578274 0 新書 2019/05/12 05:00:00 2019/05/12 05:00:00 2019/05/12 05:00:00 書評(3日、東京都千代田区で)=横山就平撮影 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/05/20190511-OYT8I50044-T.jpg?type=thumbnail

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