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    羽生善治永世七冠の「強さの秘密」

     2017年の第30期竜王戦七番勝負(読売新聞社主催)で、当時竜王だった渡辺明棋王を4勝1敗で破り、タイトルを奪取、史上初の「永世七冠」を達成した羽生善治竜王(47)。16日の竜王就位式を前に、その強さの「秘密」に迫った。(読売新聞編集委員 田中聡)

    より早く、より激しい、積極的な仕掛け

    • 第30期竜王戦七番勝負第5局で、初手を指す(左)
      第30期竜王戦七番勝負第5局で、初手を指す(左)

     「永世竜王」の資格を得て、前人未到の「永世七冠」を達成した羽生竜王。その強さの秘密はどこにあるのか。「名誉初段」程度の実力しかない筆者には到底分かり得ないことだが、全5局に帯同して気づいたことが二つある。

     一つは、「仕掛けの早さ」だ。

     羽生竜王の最大のライバル、日本将棋連盟会長の佐藤康光九段は、今シリーズで最も印象に残った手を「第1局の▲1五歩」と言う。「飛車を犠牲にしても、敵陣に食いつく」積極性に感銘を受けたそうだ。第5局の▲4五銀も、控室に驚きの声で迎えられた。「従来の定跡では成立しないとされていた」(飯島栄治七段)手だからだ。

    • 竜王戦での厳しい表情
      竜王戦での厳しい表情

     つまり、羽生竜王はこの七番勝負で、他の棋士たちが思うよりワンテンポ早く、ワンテンポ激しく仕掛け続けた。将棋ソフトの実力が人間を上回った今、玉を囲う前に攻勢を取るような積極的な指し方が若手棋士を中心に主流になりつつある。羽生竜王は、その最先端の流れに見事に対応した姿を見せた。

    自己変革し続ける柔軟性

     もう一つ、印象的なのは「マネジメント能力の高さ」だ。

     今シリーズ、羽生竜王は一度も時間に追われなかった。序盤、中盤、考えるべきところで考え、終盤にもきちんと時間を残している。他のタイトル戦では秒読みに追われた姿もあっただけに、時間のコントロールのうまさが際立った。

     マネジメント能力の高さは、盤上にも反映されているようだ。

     「10代の頃は、とにかく先まで読む力がありました。40代の今は読む速度は落ちましたが、形勢判断が的確になるなど、能力が変化しています」と言うのは、羽生竜王本人だ。若手実力者・千田翔太六段は「(多くの経験で)磨かれた『直感』で手を絞り込む将棋」と今の羽生将棋について言う。

    • 1990年の就位式で
      1990年の就位式で
    • 講師を務めた「竜王アカデミー」(読売新聞社、日本将棋連盟主催)で、参加した子どもらと対局する羽生竜王(2017年12月9日、東京都渋谷区で)
      講師を務めた「竜王アカデミー」(読売新聞社、日本将棋連盟主催)で、参加した子どもらと対局する羽生竜王(2017年12月9日、東京都渋谷区で)

     年齢による変化を自認し、それに合わせた戦い方を作り上げる。「彼を知り己を知れば百戦して(あや)うからず」という孫子の教えがある。正確な自己分析のもと、戦いのスタイルをリニューアルした結果が「永世七冠」だったのだ。

     「現代将棋への対応」と「年齢に応じたスタイルの変貌」。二つの要素から浮かび上がるのは、第一人者でありながら、常に自己変革し続ける姿である。ア・ローリング・ストーン・ギャザーズ・ノー・モス。常に転がり続ける柔軟性こそが、羽生竜王の強さの秘密ではないかと思うのである。

    2018年01月15日 17時30分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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