姿を見せない合唱、抑え気味の弦奏者…小声で語られるオペラ

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グルック作曲「オルフェオとエウリディーチェ」

 美しいけれど地味。全体にそんな印象だ。 百合ゆり の花をかたどった美術の前に、斜めに かし いだ円型の舞台(演出・ 勅使川原てしがわら 三郎)。歌手はほとんどそこでうたい、演技する。狭いスペースで挙動が制限されているうえ、舞台袖に位置する合唱はおぼろげにしか姿を見せない。

音楽祭家族向けに一新 11月、春日部 「しんちゃん」主題歌など
オペラ「オルフェオとエウリディーチェ」(堀田力丸撮影、新国立劇場提供)
オペラ「オルフェオとエウリディーチェ」(堀田力丸撮影、新国立劇場提供)

 代わりに、物語の身体性を一手に担うのが4人のダンサー。スタイリッシュともいえるが、登場人物の心情を 直截ちょくせつ に示すだけの踊りでもあり、表現はひたすら物語の内へと向いてゆく。よくいえば「凝縮」だが、むしろ「縮こまっている」ようにも感じたのだった。

 鈴木 優人まさと 指揮の東京フィルも、弦のヴィブラートを抑え気味にしているせいなのか、妙におとなしい。いや、奏者が目いっぱいに弾いていることは、たとえばオルフェオが 冥界めいかい に降りる場面のグリッサンドのかけ方で分かる。しかし、一向に怖くないのだ。同じように、妻を失った悲痛、どんでん返しの歓喜も、色彩はあくまで淡い。劇場が巨大な空間だけになおさら。

 だが後半に至って、まるで暗闇の中で目が慣れるようにして、少しずつ見えてきたものもある。ローレンス・ザッゾ(オルフェオ)の言葉のなまなましい 屹立きつりつ 。そして音楽の、意外なほどにセンシティヴな性格。3幕頭で明暗を揺れ動く和声など、ほとんどロマン派だ。いずれも大声で語られていたら、見落としていた気がする。

 このプロダクションが目指していたのは、小声でこそ語られる、この世とあの世の あわい だったと考えるべきなのだろう。オペラに祝祭ばかりを求めてはいけないと、少々反省もしたのだった。(音楽評論家・沼野雄司)

 ――5月19日、初台・新国立劇場。

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