最高峰の蓄音機が生み出す楽園…神保町「かふぇ あたらくしあ」

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【動画】戦前・戦後の名盤に酔いしれる「SPレコードコンサート」

 読売新聞ビル(東京・大手町)で開催中の「明治・大正・昭和 レコードと暮らし」展。貴重なSP盤の数々や蓄音機を目にすると、実際にレコードの音を聴いてみたくなるだろう。そんな人に、近隣にお勧めの喫茶店がある。この春オープンしたばかりの「かふぇ あたらくしあ」だ。しゃれた店内に蓄音機があり、おいしいコーヒーとともに音に身を委ねることができる。

【SP盤の流儀4】語義通りになったレコード、いまや歴史史料に

店名はギリシャ語から

レコードが所せましと並ぶ「かふぇ あたらくしあ」の店内
レコードが所せましと並ぶ「かふぇ あたらくしあ」の店内

 展示会場の大手町から、東京メトロなどで1駅の神保町。駅から徒歩2分の場所にあるビルの地下1階に降りると、「音楽好きの楽園」が広がっていた。店名の「あたらくしあ」は、「外界にわずらわされない平静不動なる心の状態」を意味するギリシャ語だ。18坪の店内は落ち着いた雰囲気で、壁面にはぐるりとSP、LPレコードなどが1万枚並ぶ。店内の中心に鎮座するのが、蓄音機の最高峰とも呼ばれるアメリカ製の「クレデンザ」。およそ100年前に製造・販売されたこの名機でクラシックなどのSPレコードがかけられ、店内を優しく包んでいる。

名機「クレデンザ」を前にする久保田さん
名機「クレデンザ」を前にする久保田さん

 カフェを開いたのは、久保田克敏さん(58)。静岡エフエム放送(静岡県浜松市)で30年以上、ラジオ番組の制作をしていたが、今年の3月に早期退職し、4月12日に開業した。中学3年生の頃に抱いた「神保町で音楽とコーヒーを楽しむ喫茶店を開業したい」という夢を実現させるため、自宅も静岡から東京へと引っ越し、まさに一念発起の決断だった。

 蓄音機を備えたカフェと聞いて「名曲喫茶」をイメージする来店客もいるようだが、実際はSPレコードファンのみならず、コーヒーを飲みに来た人、静かに過ごしたい人、読書をする人、外回り営業の休憩を取るサラリーマン、友人とおしゃべりを楽しみたい人など、幅広い客層が訪れている。

自分のレコードを「クレデンザ」で

 興味はあっても、何から聴けばよいのか分からないという人のために、月1回、第3土曜日に2時間程度、SPレコードを聴くイベントも開催されている。7月16日にはフランスの作曲家、モーリス・ラベルの名盤を流す予定だ。

コーヒーとレコードが楽しめる店を開くという夢を実現した
コーヒーとレコードが楽しめる店を開くという夢を実現した

 所有するSPレコードを、名機「クレデンザ」で聴きたいという要望も少なくないという。カフェのすぐ近くにある中古レコード専門店「富士レコード社」でレコードを購入したばかりの人が立ち寄ったり、自宅に眠っていた先祖代々のSP盤を持ってくる人がいたり。東京都内在住の40歳代の男性は、亡父が残した十数枚のSPレコードを処分しようと「何度も思いながらも捨てきれず」にあたらくしあに足を運んだ。男性は、店内ですべてのレコードを聴き、父との思い出がよみがえって泣き出してしまったという。SP盤を持っているが再生機器がないという人のため、クレデンザで再生した音源をデータにしてCD化するサービスも行っている。

 久保田さんは「単なる懐古趣味としてではなく、良い音楽をそれが録音された当時と同じように再生することは、結果、その音楽に寄り添うことになると思う」と話している。

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