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原作の白井さんと作画の出水さんが語る、独創的な世界観の誕生秘話 <1>

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 「週刊少年ジャンプ」で大人気を博した異色ダーク・ファンタジー『約束のネバーランド』の完結を記念した「約束のネバーランド展」が東京・港区の六本木ヒルズ展望台東京シティビューで開催中です。それを機に、原作の白井(しらい)カイウさん、作画の出水(でみず)ぽすかさんが、長時間のインタビューに応じてくれました。『約ネバ』の独創的な世界観はどのように生まれたのか。過酷な運命にあらがう〝脱獄チルドレン〟たちに込めた思いとは。初めて明かされる秘話も満載。4回に分けてお送りします。(聞き手・石田汗太)

白井カイウさん自画像
白井カイウさん自画像

白井カイウ 2015年、「少年ジャンプ+」読み切り「アシュリー=ゲートの行方」で原作者デビュー。16年、「少年ジャンプ+」読み切り「ポピィの願い」で出水さんと初コンビを組む。

出水ぽすかさん自画像
出水ぽすかさん自画像

出水ぽすか イラストコミュニケーションSNS「pixiv」の人気イラストレーターでマンガ家としても活動。他の作品に『魔王だゼッ!!オレカバトル』(小学館)など。

いつまで見ても飽きない、『約ネバ』世界を凝縮した一枚(第172話、扉絵)(画像はいずれも ©白井カイウ・出水ぽすか/集英社)
いつまで見ても飽きない、『約ネバ』世界を凝縮した一枚(第172話、扉絵)(画像はいずれも ©白井カイウ・出水ぽすか/集英社)

子どもだけの「秘密の計画」

 ――「約束のネバーランド展」にも展示されている、エマ、レイ、ノーマンが布団をかぶってゲームをしている絵がすごく好きです。連載第172話のカラー扉で、出水さんが会場のプレートで「これが最後になるかもしれないと思いながら描いた思い出深いイラストです」とコメントを寄せています。

 出水 物語のまとめを意識した絵です。連載も最後の方だったので、3人がメインになるような絵を描いておきたいなと思いました。修学旅行の夜じゃないですけど、子どもたちだけの「秘密の計画」感を意識しました。私の絵には、よく出てくるモチーフでもあります。

 白井 出水先生の絵は、絵自体の楽しさ、素晴らしさに加えて、小ネタの楽しさが本当に多いんです。ここに、こんなのが隠れているっていうのを一つ一つ見つけていくのが楽しくて。何回も見ているのに、まだまだ楽しめそうな気がします。

 ――この絵もそうですが、出水さんは、とにかく細かい描き込みがすごい。

 出水 一枚の絵で、今までのストーリーの要約をしたいなって思いながら描いたら、描きたいものがどんどん増えていきました。厚みのあるストーリーあっての描き込みです。このゲーム盤は実際のチェスとは違いますが、キャラクターたちが行った場所を盤上に再現してみたくて、多くのモチーフを駒に取り入れました。

 ――こういうお泊まりシチュエーション、ご自身の思い出にありますか?

 出水 少ない方だと思います。子どもの頃のお泊まり体験は楽しいものではありますが、この絵がそれらの思い出が基になっているかというと、ちょっと違う。こうだったらいいなという憧れの部分が大きいですね。

 白井 私も、この絵みたいに徹夜でゲームみたいな思い出はないですね。子どもの頃、祖父母の家に泊まりに行くのは好きでした。親戚がいっぱいいて、仲がよくて。そういうのは楽しかったです。

 出水 私、趣味でも近い構図の絵を描いてますが、だいたいキャラクターが一人なんですよ。一人でゲームしたり、本を読んだり。それらのイラストは、自分の体験が基になっているかもしれませんが、それを『約ネバ』の世界に落とし込むべく、白井先生の世界観とすり合わせながら、「こうだったらいいな」という3人の関係性を作った結果として、この絵ができました。

「幸せな絵」が多くなった理由

イザベラと幼いエマたち。ハードな物語とのギャップも魅力(第169話、扉絵)
イザベラと幼いエマたち。ハードな物語とのギャップも魅力(第169話、扉絵)

 ――『約ネバ』の物語自体は、かなりシビアで残酷なところもありますが、イラストは幸せな感じのものも多いです。

 白井 本編でシリアスな場面が続くのに、カラー扉までシリアスだと、読むのがしんどくなってしまうので。「週刊少年ジャンプ」は月曜日発売ですから、学校や仕事に行く一週間の始まりが「絶望100%」というのは、私はつらいと思った。出水先生は、いつも扉絵で複数のラフ案を出してくださるんですが、私の方で、意図して幸せな感じのものを選ぶ時は多々ありました。

 出水 私は、そこまで深くは考えていませんでしたが、単行本の表紙を描く時などは、読者の方が手に取りやすいようにとは考えていました。あんまり表紙が真っ黒だと、読者が手に取りにくいって聞いたことがあるんです。だから、なるべく親しみが湧くように、キャラクターと目を合わせてもらえるように、こういう世界観なら読んでみたいって思ってもらえることを目指していました。

 ――出水さんの絵の「狭いところに楽しいモノがぎゅうぎゅう詰まってる感」は、どこから来るんでしょうか。

出水さんお気に入りの「図鑑」。本がモチーフのイラストも多い(第45話、扉絵)
出水さんお気に入りの「図鑑」。本がモチーフのイラストも多い(第45話、扉絵)

 出水 小さいスペースに、ぎゅっと細かいモノを詰め込むのは元々好きです。でも今回の一連の絵は、『約束のネバーランド』の世界観があるからこそ、生み出されたものだと思います。エマ、レイ、ノーマンは天才児たちなので、3人の頭の良さを絵で表すにはどうしたらいいかって考えました。本や図鑑などがよくモチーフになるのはそのためです。白井先生の世界がなければ出てこなかった絵だと思います。

『注文の多い料理店』の悪夢

 ――鬼の世界で子どもたちが食料になる、という物語はどのように生まれたんでしょうか。

 白井 まず、子どもの頃に読んだり聞かされたりした、グリム童話や日本昔話が素地としてあったと思います。「山姥(やまんば)」とか、人食い鬼の話とかね。幼稚園くらいの時に悪夢を見たんですよ。レストランに入って、何か注文しようと思ったら、周りの客がみんな動物で、実は自分が食べられる側だったという……。

 ――宮沢賢治の『注文の多い料理店』みたいですね。

 白井 そうそう、それを読んでもらった日の夜に、そんな夢を見たような気がするんです。あと、(海外ドラマの)『プリズン・ブレイク』のような脱獄ものが好きで、でも舞台が刑務所ばかりだよな、子どもが脱獄する話が読みたいな、というふうに、私の中でいろいろなものが積み重なって、最初にジャンプに持ち込んだネームができていったと思います。

 ――2013年の冬に、白井さんが300ページ分のネームをいきなりジャンプ編集部に持ち込んだという、伝説的エピソードですね。その後、ネームを連載用にたたき直し、作画が出水さんに決まるまでが、また大変だったと聞いています。出水さんは、初めて白井さんの原作ネームを読んだ時、どう感じましたか。

 出水 びっくりしましたね……。当時はモンスターイラストや児童マンガ中心のお仕事だったので、サスペンスって、描いたことなかったんですよ。最初数ページをめくった時点では、できるかな?と心配だったんですが、なにしろ第1話で「天国から地獄」でしょう。第3話までネームを読ませてもらって、続きが気になって仕方ない。今まで見たことのない世界観で。もはやできるできないの問題ではなく、描かせていただけるなら、全力でやらねば!と感じました。

ネガティブな気持ちを創作に昇華

 ――描き手がなかなか決まらなかったのは、物語の世界観がダークすぎたことも一因だったそうですが、出水さんは、どう感じましたか?

 出水 いえ、むしろ好みでした。絶望的なシチュエーションにワクワクした。私が趣味でpixivに発表してきたイラストは、私が日常生活で感じた、ちょっとイヤなことや、つらいことを、ファンタジーに落とし込んでいることが多いんです。ネガティブな気持ちを絵に昇華してきた。そういうところを白井先生が見抜いて、声をかけてくださったのかとさえ思ったほどです。

 白井 私も、マンガを作る時、幸せな体験が基になることはあまりなくて、イヤだな、悔しいな、腹が立つなってことを、ちょっとずつ混ぜていることが多いんです。自分の闇の部分を創作にぶち込んで、読者をハッピーにしたい。楽しいことは楽しいままで、昇華しなくていいんですよ。でもイヤなことを自分にため込み続けたら、自分の精神衛生上よくないですし、作品に生かすことで、ため込まずに済むんです。だから、マンガ家はそれを創作にぶつけた方がいいんです。それで作品も生まれるし、健全な生活も送れるし。

 ――そういうところ、お二人は根本的に似ている点があった……。

 出水 ハハハ、それ考えたことなかったけど、言われてみると確かにそうかも。白井先生が『約ネバ』で、私のそういうところを引っ張り出してくれたんです。

(続く)

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1730572 0 サブカル 2020/12/28 09:00:00 2020/12/29 09:47:01 https://www.yomiuri.co.jp/media/2020/12/20201225-OYT1I50045-T.jpg?type=thumbnail

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