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原作の白井さんと作画の出水さんが語る、独創的な世界観の誕生秘話 <3>

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 『約束のネバーランド』作者コンビへのインタビュー第3回。作画の出水(でみず)ぽすかさんに「エマは騎士、ノーマンは馬」と説明した白井(しらい)カイウさんの真意とは? 『約ネバ』世界で「最強の母」がイザベラなら、「最悪の父」は誰? 人気キャラクターのこれまで語られなかった意外な深層に迫ります。(聞き手・石田汗太)

ノーマンは「王子様じゃなくて馬」

 ――ノーマンについて、白井さんは出水さんに「王子様じゃなくて馬です」と説明したそうですね。それはどういう意味なんでしょうか。

 白井 あくまで認識の共有のためです。ノーマンが白馬の王子様だと、エマがお姫様になってしまうので、そうじゃないんですという確認のため。エマがナイト(騎士)なんです。ノーマンはお姫様を守ってあげる王子ではなく、騎士が思い通りに動けるよう、サポートする白馬の役であってほしい。手塚治虫先生の『リボンの騎士』になぞらえると、サファイアと愛馬オパールのような関係かなと。ノーマンはフランツ王子ではない。

ノーマン(左端)は、作中、最も変化したキャラだろう(小説版『約束のネバーランド~ノーマンからの手紙~』表紙イラスト)(画像はいずれも ©白井カイウ・出水ぽすか/集英社)
ノーマン(左端)は、作中、最も変化したキャラだろう(小説版『約束のネバーランド~ノーマンからの手紙~』表紙イラスト)(画像はいずれも ©白井カイウ・出水ぽすか/集英社)
約2年後のノーマン(第154話から)
約2年後のノーマン(第154話から)

 ――エマには、サファイアのイメージも少し?

 白井 いえ、そういうことではありません。エマとノーマンのイメージが自分の中でできあがってから、『リボンの騎士』を改めて見た時に、「ああ、手塚先生はすごいな」と思ったんです。あくまで、たとえです。

 ――その流れですと、レイの立ち位置は……。

 白井 えっ……考えたことなかったけれど、無いですよね。あえて当てはめると、あれかな? 天使のチンク(笑)。ウソです。冗談です。

エマは女の子だけれど「ヒーロー」

 出水 私も、白井先生の世界観を理解するためのたとえとして受け止めました。だから、エマを騎士、ノーマンを馬というイメージで描いたわけではないんです。エマがお姫様ではない、というのが大前提なんですね。

 ――エマはヒロインではない、ヒーローであると。

 白井 それが全てですね。「読者が恋をする対象ではダメ」と、担当の杉田さんに最初に言われたんです。エマは、少年読者が自分を重ねられるキャラクターでなければいけないと。

 出水 そこは、絵的には結構難しかったですね……。エマは、GF(グレイス=フィールド)ハウスでは白い制服でスカートをはいているし、描き方によっては女の子らしくなりすぎてしまう。でも、男の子っぽい要素もあるけれど、エマはやっぱり女の子なんです。そこはかなり気をつけたところです。

第1巻カバー下の少女は誰?

 ――イザベラは主に「GF脱獄編」と終盤にしか登場しませんが、「裏の主役」と言いたいくらいに、圧倒的な存在感がありますね。

 白井 『約ネバ』では、人間の多面性をちゃんとマンガで描きたかった。絶対許せない相手は必ずいると思うけれど、勧善懲悪で倒されるべき敵も、悪100%なのか、というのはずっと考えながらやっていました。だから、イザベラも、鬼も、エマたちも多面的な存在なんです。

 ――ちょっと驚くのが、単行本第1巻の表紙カバーを外すと、本体表紙で、同じ風景をバックに、黒髪の少女が一人立っている。第1巻を読んだ時点では、誰なのかわからない……。

第1巻表紙イラスト。このカバーを外すと……
第1巻表紙イラスト。このカバーを外すと……
同じ風景に「謎の少女」が立つ。他の巻でもこうした仕掛けがたっぷり
同じ風景に「謎の少女」が立つ。他の巻でもこうした仕掛けがたっぷり

 白井 これは出水先生のアイデアです。第1巻発売時点(2016年12月)で、イザベラの少女時代の姿は、ジャンプ本誌連載でもまだ見せていなかった。ジャンプで追ってくれている読者が「これ、イザベラだ!」と真っ先に気づく仕掛けなんです。読者がすごく喜んでくれた。こういう見せ方もできるんだなあって、出水先生には大感謝です。

 出水 いくつかのラフ案の一つだったんですね。さすがに、早すぎるかなあ……と思いながら出したんですが、白井先生が「このタイミングだからこそ、これ」って選んでくださったんです。それがすごいことだと思います。

一番美人で、一番格好いい

 ――イザベラは、「GF脱獄編」では冷酷無比の鬼ママですが、「ただ普通に愛せたらよかった」という言葉も、彼女の真実だった……。

 白井 そうですね。イザベラが本当に子どもたちを愛して、助けてあげたいと思っても、自分の心臓にはチップが埋め込まれているし、外に逃げても鬼の社会だし、どうにもならない。自分が反抗して捕まって、子どもたちが全員出荷されてしまうよりは、自分のできる範囲で精いっぱい、子どもに幸せな時間を与えてあげるのが彼女の「正義」になったんですね。その判断も間違っているとは言えないんです。

 でも、しょせん、それは自分を正当化する言い訳で、本当は自分が生き延びたいだけだったんだって、実の息子の存在で気づかされてしまう。かわいそうな人です。

 ――でも、超有能なイザベラが子どもに英才教育を施したおかげで、エマたちは脱獄し、世界を変えたとも言えませんか。

 白井 イザベラにそういう意図があったかどうかはわかりませんが、読者がそういうふうに思ってくれるのはうれしいです。

 出水 イザベラはメチャクチャ描きがいがあると共に、大変なキャラでもありました。この作品で、一番美人で、一番格好いいキャラでもありますから。美人って描くのが難しいんです。どんな場面でも、美しさが損なわれてはいけないから。

イザベラ、満を持しての再登場。美しい! コワい!(第162話から)
イザベラ、満を持しての再登場。美しい! コワい!(第162話から)

 ――ある意味、鬼の女王レグラヴァリマよりも美しいのがイザベラ。

 出水 そうですね。鬼は仮面で目が隠れているから、顔を描く時のプレッシャーは割と少ないんです。人間キャラ、特にイザベラは目線が一番大事なので、すごくプレッシャーがありました。

子どもたちを成長させた?レウウィス

最凶の鬼・レウウィス大公。物語終盤で意外な面を見せる(第87話から)
最凶の鬼・レウウィス大公。物語終盤で意外な面を見せる(第87話から)

 ――イザベラがこの作品における「母」なら、「父」は誰でしょうか。鬼のレウウィス大公なんて、意外とスパルタ的な父役ではないかと思いましたが。

 白井 どうなんでしょう。

 ――イザベラとレウウィスは、真剣に子どもたちの「敵」になる。子どもたちをナメて、手加減したりしない。そこが似ている気がします。結果的に子どもたちが大きく成長する。

 白井 そうか、成長させるという意味。まあ、必ずしも父親=子どもを成長させる存在とは限りませんが……。レウウィスが登場する「秘密の猟場(かりにわ)編」は、路線変更して作ったシリーズで、「知性鬼たち」を描くのがテーマだったんです。その中で、ちゃんと人間に敬意を払いつつ、ものすごく怖くて残虐な熟練のハンターとしてレウウィスを出しました。当初はあまり深く考えていなくて、あんな存在感のあるキャラになるとは思わなかった。デザインは出水先生への完全なムチャ振りです。

 出水 レウウィスは怖いけど紳士というイメージで。鬼キャラクターが一気にたくさん出てきたので、時間的には大変だったんですが、画面で並んだ時にパッと映えるよう、デザイン的な色分けを考えるのは楽しかった。レウウィスが後々、あそこまで活躍するとは思いませんでした。白井先生がどんどん膨らませてくださったので。

ピーターは描くのが楽しかった

「食用児のパパ」ピーターは暴走する(第172話から)
「食用児のパパ」ピーターは暴走する(第172話から)

 白井 この作品で、あえてパパを挙げよと言われたら、私はやはり、ピーター・ラートリーだと思います。「自称パパ」ですけど(笑)。

 出水 ピーターは本当に嫌なヤツで、でも嫌なヤツの顔って、描くのが楽しいんです。だから、表情がコロコロ変わる最後の方は、すごい面白かった。

 ――ピーターがこの作品で一番嫌なヤツでしょうか。

 白井 私はアンドリューの方が嫌だなあ。でもアンドリューだって、教育とか環境が悪かっただけで、ひょっとしたらわかり合える余地があったかもしれない。そういうことも含めて、人間は多面的だと思っているので。

アイシェで語り残したこと

出番こそ少ないが、アイシェのファンは多いはず(第139話から)
出番こそ少ないが、アイシェのファンは多いはず(第139話から)

 ――多面性と言えば、優しい鬼に育てられた少女アイシェも、印象的なキャラクターでした。

 出水 アイシェは個人的に大好きなキャラです。登場は後半だけれど、彼女がいたことで、鬼と人間の絆みたいなものが出せましたよね。

 白井 アイシェは、まさに多面性を描くために、連載前から想定していたキャラだったんです。ただ、話の枝葉が増えるので、最後まで出さずに終わろうかとも思いました。第160話で、ノーマンが鬼語でアイシェに何かを言いますが、その内容は本編で明かしていません。どこかのタイミングで外伝にしたいと思っています。

 ――アイシェにとっては、ノーマンたちは親の敵。鬼の世界の方が故郷かもしれない……。

 白井 そうなんですよ。人間の世界に来たアイシェが何を思っているのか、それをどこかで描きたいですね。

(続く)

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1736062 0 サブカル 2020/12/30 09:00:00 2020/12/31 10:01:09 https://www.yomiuri.co.jp/media/2020/12/20201228-OYT1I50095-T.jpg?type=thumbnail

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