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4月16日に、ベテランスーツアクターらによる有観客イベント「還暦祭12」を行った。通常時の定員の半分よりはるかに少ない30人限定ではあったが、やっと開催にこぎつけた。実に2年2か月ぶりの有観客イベントである。

とはいえ、コロナ禍中も配信では開催していたので、会場にも出演者にもそれほど「久しぶり」感はなく、ごく当たり前な感じでステージに上がった。ところが、冒頭、ステージからお客さまの顔を見た瞬間、こみ上げてくるものがあったのだ。期せずして涙声になってしまい「え、スタート1分で泣くのか、わたし。新人賞とったアイドル歌手か?」と心の中で自分で自分に突っ込んでしまった。もちろんそこは年の功で(涙)ぐっとこらえて持ち直したが、やはり、イベントとは、笑ったり泣いたり喜んだりしてくれる目の前のお客さまがあってこそなんだな~、と改めて実感した次第である。もちろん、配信で遠隔地からでも見られるとか、家を空けられない方、その時間に会場に来られない方が参加できるというのが大きな利点だったことは否定しない。それでもやはり、ナマにはナマにしかない魅力がある、ということだ。
出演者は、スーパー戦隊シリーズで数多くのレッドを演じた新堀和男さん、大戦隊ゴーグルVなどでブラックの変身前後を演じた春田純一さん、同作で悪役を演じた高橋利道さん、ゴジラのスーツアクターを務めたことでも有名な喜多川2tomさん。さらに、このイベントのレギュラーメンバーで現在は闘病中の大葉健二さんの弟子である武智健二さんと、超新星フラッシュマンのグリーンフラッシュの植村喜八郎さん。以上6人のレジェンドたちが新宿のライブハウスに集結した。

正直、昨年の配信イベントで、スーパー戦隊シリーズ45作と仮面ライダー50周年記念のトークは、やりつくした感があるし、亡くなったアクション関係者の思い出も取り上げた。配信では沈黙が支配する瞬間すらあり、もうトークのネタが尽きたかと、ちょっぴり不安だった。しかし、

中でも、ヒーローの「名乗り」についてのトークが大変面白かった。最近は名乗りポーズに挑戦した動画を定期的にアップしている春田さんが、この日もポーズを伝授(アシスタントはおなじみ、林潔さん)。それを見ながら、名乗りについてトークしたところ、全員が一致して「名乗りは形ではない、気持ちだ」と強調したのだ。私たちが名乗りをマネするときには、どうしても形にばかり気をとられてしまうが、新堀さんいわく「大事なのは気持ちなんだよ。そのヒーローや、モチーフにしている動物などになりきって名乗る。そのうえで、面の中から自分の顔が浮き出るくらいの気迫がないと、単なるポーズで『名乗り』にならない」とのこと。実際、バルイーグルやレッドホークなど、鳥をモチーフにしたレッドを演じる時には、動物園に行き、鳥の羽ばたく瞬間の勢いやツメの形を観察したこともあるそうだ。「同じ鳥でも指先にどう力を入れてツメに見せるかで全く違ってくる」と名人は強調する。神は細部に宿る、といったところか。大いに語る名人に、舞台上では「え、じゃあワシとタカの違いは?」とか「トンビだったらどんな手になるの?」と茶々が入り、場内は感心したり、爆笑したりであった。
楽しいゲームや、イベント限定ヒーローユニット「いいんだよグリーンだよズ」も参加してのソーシャルディスタンス殺陣をはさみ、最後にはそれぞれの名乗りポーズを全員に披露してもらった。BGMや効果音なし、無音の中での名乗りメドレーだったが、指先が風を切る音ひとつ聞き逃すまいと、場内は
改めて、イベントの場は、レジェンドの話を聞き、レジェンドの存在を感じるための貴重な場なのだな、と気付かされた。まだまだコロナ警戒は怠れないけれど、少しずつでも、皆が集い、空間を共有するイベントを再開していきたい。
