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テレビ番組を無料で見られる民放共同の動画サイト「TVer(ティーバー)」の3月の月間動画再生数が2億5000万回を超え、過去最多となった。広告収入も着実に増えており、

20~40代女性中心、月間ユーザー数1850万人
同サイトは2015年、放送後1週間の提供を基本とした「見逃し配信サービス」のプラットフォームとして約50番組でスタート。現在は毎週500番組以上を視聴できる。先月11日からは、民放5系列が放送と同時に視聴できる「同時配信サービス」も始めている。
利用は着実に増え、3月の月間動画再生数は前年同月比約1・4倍の約2億5300万回。月間ユーザー数は1月に1850万人を記録した。龍宝社長は「毎月2000万人弱が利用するサービスは日本トップクラス。3000万、4000万になれば完全なメジャーメディアになる」と話す。
現在はドラマ6割、バラエティー3割で、残りがスポーツやアニメ。メインユーザーは、ドラマをよく見る20代から40代までの女性だ。「今後、男性視聴者が多いバラエティーを増やす。同時配信でニュース番組も出てくるし、スポーツも入れば、サービスとしてバランスが取れる」
地方局の番組にも熱視線を送る。「21年に地方局発で一番よく見られたのは島根・山陰中央テレビのバラエティー『かまいたちの
また、各局が工夫を凝らすのが、過去番組の配信だ。「4月の新ドラマ開始に合わせ、主役の過去の出演作コーナーを作った。アーカイブ配信は局側も協力しやすく、ユーザーも見やすい」。TVerでドラマを見せて自局の動画配信サイトに誘導するなど、各局の戦略が読み取れるという。
“正解率”高いターゲティング広告でクライアント500社超

現在、TVer収入の7割は放送局からのプラットフォーム利用料。残りが番組の合間に流れるCM収入だ。今後、この比率を逆転させたい考えで、TVer流の「ターゲティング広告」の成果に期待を込める。
ネットユーザーに合わせて内容を変えるターゲティング広告の多くは、その人がどんなサイトを見ているかという視聴動向などから流す広告を選ばざるを得ない。このため、広告主が狙った視聴者に正しく届く“正解率”は30~40%程度とされる。しかし、TVerでは、利用者に年齢と性別を事前に登録してもらっており“正解率”は95%にも達するという。
さらにテレビと同じ番組なので、広告主にとって内容に不安はなく、CM飛ばしができない点もアピールポイントだ。
国内の広告費はテレビが19年にネットに逆転された。「ネット広告は多くがユーチューブに流れてきたが、僕らが存在感を出したい。放送局が金をかけて一生懸命考えて作ったコンテンツに流れるCMですよ、と。消費者を選ぶ商品のCMはTVerへ、そうでないものはテレビへと、広告主に選択してもらえる」。昨年度の広告主は500社を超え、さらなる拡大を目指す。
ネット接続テレビでの視聴、巣ごもり需要で急増
1月時点で、利用者の64%がスマートフォンやタブレットで、12%がパソコンで視聴していた。一方、ネットに接続できるテレビでの視聴が、コロナ禍の巣ごもり需要で25%に急増。今後はこうした「見やすさ」がカギとなりそうだ。
対策の一つが、ログイン機能「TVer ID」の導入だ。これを使えば、例えば、視聴をスマホからテレビに替えたい時、スマホを切れば、その場面からテレビで視聴再開でき、確かに便利だ。
龍宝社長は6月の株主総会で会長になる予定。「NHKの番組を含め、テレビのネット上での“再現”はできてきた。1週間ごとに番組が変わるので、毎日使うサービスにしたい」とさらに意気込んでいる。