文字サイズ

    盛んな金属加工業、大気に高濃度の発がん性物質

    • 検討会でトリクロロエチレンの排出抑制に向けて意見交換する中杉委員長(中央)ら(7月中旬、新潟市内で)
      検討会でトリクロロエチレンの排出抑制に向けて意見交換する中杉委員長(中央)ら(7月中旬、新潟市内で)

     新潟県燕市の金属加工などの事業所が密集する地域で、発がん性が指摘される有害物質トリクロロエチレンの大気中濃度が、国の環境基準値を超える高さに迫っている。地元では生活空間でも全国最悪の水準で推移しており、県は排出抑制に乗り出した。

     「燕市内には小さな事業所が多い。処理装置をそう簡単には導入できないのではないか」

     県が7月に設置した検討会の第1回会合では、環境問題に詳しい有識者から課題の指摘や、地下水の汚染実態の調査などを求める意見が相次いだ。国立環境研究所の特別客員研究員で、検討会の委員長に就任した中杉修身氏(環境工学)は「事業者の経済的な負担も含めてどういった対応ができるのか、十分に意見を聞きながら進めたい」と語った。

     県は2019年度中に数値的な目標を含めた指針の策定を進め、事業者とも協力し、セミナーを開くなど3年間で排出削減に力を入れていく。

     世界保健機関(WHO)の研究機構は14年、トリクロロエチレンに「発がん性がある」と指摘。環境省の審議会は年平均で1立方メートルあたり200マイクロ・グラム以下としている現行の基準値について、引き下げの検討を始めている。

     金属加工業が盛んな燕市では、ステンレス製品に残った研磨剤の洗浄などに多く使用されている。県環境対策課によると、現状ではトリクロロエチレンに代わる安価で有効な洗浄剤はなく、燕市内では全国に比べて排出量の削減が進んでいない。16年度の全国の事業所の排出量は計2536トンだったが、燕市内だけで10%ほどを占めた。

     環境省が16年度に大気中濃度を半年間にわたって調べたところ、燕市内の事業所の密集地域で平均値が1立方メートルあたり220マイクロ・グラムを観測。最大の月は530マイクロ・グラムに達し、国が定めた年平均の基準値を超えるおそれが高まっている。県が測定した生活空間の大気中濃度は同年度、全国平均の27・5倍となる11マイクロ・グラムだった。

     燕市の鈴木力市長は7月末の記者会見で、「燕市では古くからの課題。設備投資がかかわる話になるかもしれないが、検討状況をしっかり見極めて対応していきたい」と述べた。

     ◆トリクロロエチレン=金属製品の洗浄などに使われる有機塩素系溶剤。曝露(ばくろ)により、腎臓がんのリスクが高まることや頭痛や目まいなど神経系への影響が指摘され、排出規制の対象となっている。新潟市などを流れる大通川では2017年2月、国の基準値(1リットルあたり0・01ミリ・グラム以下)を上回る0・048ミリ・グラムが検出された。

    2018年08月08日 15時33分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
    おすすめ
    PR
    今週のPICK UP
    PR
    今週のPICK UP