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    聞きたい みどりの経済(4)環境問題解決へ債券活用

    大和総研 河口真理子主席研究員

    •  1986年、一橋大学大学院修士課程を修了後、大和証券に入社。91年に大和総研へ転籍後、環境経営などの調査を手がける。同社環境・CSR調査部長、東京都環境審議会委員などを歴任した。2012年から現職。著書に「CSR 企業価値をどう高めるか」などがある。
       1986年、一橋大学大学院修士課程を修了後、大和証券に入社。91年に大和総研へ転籍後、環境経営などの調査を手がける。同社環境・CSR調査部長、東京都環境審議会委員などを歴任した。2012年から現職。著書に「CSR 企業価値をどう高めるか」などがある。

     地球温暖化対策に民間資金を集めるため、企業や自治体が発行する債券「グリーンボンド」が世界で急拡大している。2020年以降の温暖化対策の国際的な枠組み「パリ協定」が掲げる「2度目標」の達成には、民間資金の活用が重要との認識が世界で広がっていることが背景にある。グリーンボンドの現状と課題について、環境経営に詳しい大和総研の河口真理子・主席研究員に聞いた。

     投資の手法は大きく分けて、株式の購入、債券の購入の2種類がある。グリーンボンドは債券の一種で、再生可能エネルギー導入や省エネ設備の設置といった環境ビジネスに使途が特化されている。一方、株式投資の場合、環境事業に積極的な企業の株式を買う投資家が増えれば、その企業の評価は高まるが、その資金が直接環境事業に充てられるとは限らない。株式を発行して、広く資金を集めるのは基本的に上場企業に限られるが、債券なら国、自治体、政府系機関、非上場企業も発行できるというメリットもある。

     07年に初めて発行されて以降、グリーンボンドの発行額は年々増え、16年には世界全体で810億ドルに達した。債券全体の発行額からするとまだ1割にも満たないものの、途上国を含む世界全体が参加するパリ協定が2年前に採択されたのをきっかけに、民間資金が環境投資に向かう流れが強まった。グリーンボンドへの投資は今後も拡大するだろう。

     グリーンボンドの特徴は、透明性の高さにある。これまでの債券は資金の使途を明示しなくても、金利を支払い、元本を返済すれば問題なかったが、グリーンボンドは集めたお金が必ず環境対策に使われていなければならない。

     第三者認証によって、投資資金が本当に環境対策に使われたのか、投資先の事業は環境対策として有効かといった確認が重要になる。こうした検証を通じ、対象事業でどれだけ二酸化炭素(CO2)を削減できたかといった環境改善の効果がわかる。

     日本でも、3月に環境省がグリーンボンドを発行する際のガイドラインを策定。10月には、東京都が国内の自治体として初めてグリーンボンドを発行した。発行事例は増えてきたが、欧米や中国、インドに比べると発行額はかなり少ない。

     日本が立ち遅れてしまったのにはいくつかの理由がある。一つは「専門家の検証に手間がかかる」として、第三者認証に難色を示す発行主体が少なくないこと。欧米や中国では「性悪説」に立って第三者が検証するのは当然とされるが、日本では検証のコスト負担に違和感を持つ人が多いようだ。

     日銀の金融緩和政策で、日本の金利は極端に低い状況にある。債券は返還義務があるため損失のリスクは低いものの、利息も相対的に少ないため、大きな利益を求める投資家には魅力に乏しいものに映るのかもしれない。ただ、温暖化対策という使途が明確で、効果も分かりやすく示されるため、東京都などの取り組みが成功すれば、後に続く自治体や企業も増えるだろう。

     日本の経済規模を考えると、グリーンボンドも含め、環境問題や社会問題の解決を重視する投資は拡大する余地が大きい。世界のCO2濃度が高くなって2度目標達成のハードルが上がり、温暖化の影響とみられる気候災害が頻発している。地球は危機的な状況だということをあらゆる立場の人が認識し、投資という手段を活用してほしい。(社会部 野崎達也)

    2度目標

     産業革命以降の世界全体の平均気温の上昇幅を、2度未満に抑えるという国際的な目標で、2年前に採択されたパリ協定に盛り込まれた。国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)によると、2度に達すると、作物の生産高が地域的に減少するなどの影響が出る。IPCCは目標達成のため、CO2濃度を450ppm程度にとどめる必要があるとしているが、世界気象機関(WMO)などによると、濃度は年々高まり、すでに400ppmを超えている。

    グリーンボンド

     太陽光、風力発電などの再生可能エネルギー、省エネ事業など、環境改善効果のある事業(グリーンプロジェクト)に使途が限定された債券(ボンド)。2007年に欧州投資銀行が発行したのが最初の事例とされ、世界銀行なども発行している。投資家には一定の利息が支払われ、償還期間が経過した後には元本が払い戻される。一連の手続きは、スイスに本部がある金融機関の業界団体「国際資本市場協会」が14年に定めた指針「グリーンボンド原則」に従って進められている。

    第三者認証

     グリーンボンドで得られた資金が目的通り環境改善に使われるのか、研究機関や監査法人などの第三者がチェックし、確かめること。グリーンボンド原則には、「(債券の)発行体は外部機関によるレビューを活用することが望ましい」と記されており、自治体などが発行する債券を「グリーンボンド」と呼ぶには、外部に調査を依頼し、調査にかかるコストを負担することが一般的になっている。ノルウェーの国際気候・環境研究センターなどが認証を行っており、中国やインドでも認証機関が増えている。

    2017年12月11日 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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