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    石炭火発増設に厳しい目

    40基計画 脱炭素化遅れ懸念

     安価で安定した電力として新増設計画が相次ぐ石炭火力発電所に厳しい目が向けられている。仙台、神戸両市では地元が反発し、自治体も独自の対策に乗り出した。二酸化炭素(CO2)を大量に排出する石炭火力に依存すれば、国際枠組み「パリ協定」発効で脱炭素化へと向かう世界経済の流れに乗り遅れかねない。

    住民が提訴

     仙台港(仙台市)にそびえる煙突から白煙が立ちのぼる。昨年10月に営業運転を始めた石炭火力発電所「仙台パワーステーション(PS)」。関西電力子会社と伊藤忠エネクス子会社が共同出資して建設した。

     この発電所に対し、周辺住民の一部と仙台市は抵抗感を示す。発電所から約2キロの場所に暮らしていた自営業女性(54)は持病のぜんそくが悪化したといい、約10キロ離れた塩釜市へ引っ越した。住民124人は昨年9月、大気汚染による健康被害やCO2排出による地球温暖化に影響が出るなどとして運転差し止めを求める訴訟を仙台地裁に起こし争っている。

     運営会社が環境への影響について十分に事前説明しなかったことも住民の不信感を招いた。出力11・2万キロ・ワットで、国が定める環境アセスメント(影響評価)の基準をわずかに下回るため同社は環境アセスを実施しなかった。原告団長の長谷川公一・東北大教授(63)(環境社会学)は「経済性を優先して、環境への影響や住民の意見を軽視している」と指摘する。

     東日本大震災の被災地に石炭火力発電所の建設計画が相次ぎ、住民の不安の高まりを受け、仙台市は昨年6月、経済産業省と環境省に国が一定の歯止めをかけるよう要望。12月には全国で初めて立地自粛を促す指導方針も作った。ただ、これより前に四国電力と住友商事が市内で別の石炭火力発電所建設計画を発表。地元ではさらなる環境への影響が懸念されている。

     仙台PSの運営会社は「環境影響評価法の手法で定量的な影響予測評価を実施し、環境基準に適合する結果が得られている。周辺住民の健康や環境に特段の影響を与えるものではない」と話している。

     一方、神戸市でも神戸製鋼所が石炭火力発電所の建設計画を発表したが、地元住民らは計画撤回などを求め、公害調停を兵庫県公害審査会に申し立てている。

    CO 2 排出増

     石炭火力発電所の新増設計画は全国で約40基ある。背景には、〈1〉福島第一原発事故後に停止した原発の代わりに活用〈2〉電力自由化による安売り競争でコスト安の石炭を求める動きが加速〈3〉エネルギー基本計画でベースロード電源に位置付けられている――などがある。

     ただ石炭火力のCO2排出量は最新型であっても液化天然ガス(LNG)火力の約2倍ある。

     海外の機関投資家の間では、石炭火力は規制強化で使えなくなるリスクのある「座礁資産」と捉える見方が広がっている。河野外相が諮問した有識者会合も今年2月、「石炭が必要との考え方は過去のものだ」と提言した。

     しかし、途上国や新興国を中心に石炭火力は増えている。世界で中国に次いで排出量の多い米国のトランプ政権は、パリ協定離脱を宣言し、高効率な化石燃料利用を後押しする動きを見せる。日本も昨年11月の日米首脳会談で米国と協力して新興国への石炭火力発電技術の輸出に合意するなど石炭火力を重視する。

     国連環境計画(UNEP)は昨年11月公表の報告書で、日本を石炭火力推進国として中国やインドとともに名指しで批判した。

    撤回の動き

     計画撤回の動きもある。東燃ゼネラル石油(当時)などは2015年、千葉県市原市に石炭火力発電所を建てる計画を発表したが、パリ協定発効や環境負荷などを考慮し、17年に撤回した。建設計画のある企業の幹部は「石炭火力は経済性の面で魅力だが、住民トラブルを考えると進めづらい」と判断に迷っている。(中根圭一)


    ※ 環境アセスメント(影響評価)

     環境に影響を及ぼす恐れのある事業について、事業者が事前調査、予測、評価を行い、結果を公表、住民や自治体などから意見を聞き、環境への影響を回避、縮小するための制度。環境影響評価法の政令では、アセスが必要な火力発電所を出力11・25万キロ・ワット以上と定めている。

    2018年03月26日 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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