大阪・西成に「中華街」構想…地元商店主は困惑
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大阪市西成区のあいりん地区周辺の商店街に“大阪中華街”をつくる構想が浮上している。大阪での2025年国際博覧会(万博)などを見据え、商店街で飲食店などを営む華僑の団体が計画しており、高齢化による閉店などが相次ぐ商店街の活性化を狙う。しかし、周辺では中国人経営のカラオケ居酒屋による騒音トラブルなどもあり、地元商店主らからは唐突な構想に戸惑いの声も上がる。
◆騒音に苦情も
日が暮れると、中華街の候補地内にある飛田本通商店街には、黄や赤などの派手なネオンに彩られた「カラオケ居酒屋」と書かれた看板が並び、店から漏れる歌声が響く。現在、周辺の今池本通商店会や新開筋商店街などに、同様の店は約150軒。約10ある周辺商店街全体の3~4割を占め、多くは中国人経営という。
中国出身の華僑の経営者らでつくる「大阪華商会」の会長で、不動産業を営む林伝竜さん(54)によると、カラオケ居酒屋が急増したのは12年頃から。林さんも約10年前から空き店舗を購入し、約20軒をカラオケ居酒屋などとして貸し出している。
土地の価格が安く、開業しやすいことが店増加の背景にあるが、防音設備のない店が未明まで営業し、周辺からの苦情で市や府警が繰り返し立ち入り指導する事態にもなった。林さんは「カラオケ居酒屋が増えすぎ、地域住民からの苦情もある。もう限界」と話す。
◆交通利便性良く
林さんらは17年12月、大阪華商会を設立。周辺で飲食店や不動産業などを営む中国・福建省出身者約40人が「本格的な中華料理などの店に変え、商店街に活気を取り戻したい」と、「中華街構想」を打ち上げた。
構想の中心地は、大阪市天王寺動物園(天王寺区)南西側の南北約500メートル東西約400メートルのエリア。商店街の出入り口に「中華街」の門を建て、同会会員が持つ土地や店舗などを中心に、中華料理店や雑貨販売店などを開店させる計画だ。
日雇い労働者が多く集まったあいりん地区の近辺は、関西国際空港と都心を直結する南海電鉄が通り、繁華街・ミナミにも近い交通至便の地。22年には高級ホテルなどで知られる星野リゾートもホテルを開業予定だ。同会は「外国人観光客の増加も見込まれ、中華街にうってつけの地。横浜や神戸のような観光地にしたい」と意気込む。
今後、同会は地元商店主らと話し合いを進め、学識者や住民を交えた実行委員会の設立も目指すという。
◆実現にはハードル
一方、古くからの地元商店主らからは、構想に困惑の声が上がる。
西成区商店会連盟の村井康夫会長(67)は「本格的な中華料理店などが増えるのは、にぎわいにもつながる」と歓迎する一方で、「急に『中華街』と名乗られても困る。時間をかけ、皆が納得できる環境整備が必要だ」と指摘する。
商店街で居酒屋を営む男性(69)も「カラオケ居酒屋が増えた時も強引で、あっという間に商店街の景色が変わった。騒音トラブルもあり、構想に反対する人もいるだろう」と、実現には懐疑的だ。
各地の中華街に詳しい山下清海・立正大教授(人文地理学)は「日本で新たな中華街を整備しようとするケースは珍しい。実現には地元との良好な関係性が最重要だ。国際化が進む中で、新たなまちづくりの試金石となる」と話している。