[スキャナー]スマート農業 実用へ前進…無人トラクター/ドローンで農薬

[読者会員限定]
無断転載禁止
メモ入力
-最大400文字まで

完了しました

無人トラクターで農作業の効率化が進むと期待される(1月15日、茨城県つくば市で)
無人トラクターで農作業の効率化が進むと期待される(1月15日、茨城県つくば市で)

 最先端のロボット技術や人工知能(AI)を活用する「スマート(賢い)農業」の実用化に向けた動きが加速している。政府は2019年度から国内約50か所のモデル農場で、自動運転トラクターを使って畑を耕すなどの実証実験に乗り出す。農家の高齢化や担い手不足が深刻化する中、農業再生の切り札になるかが注目される。(経済部 石黒慎祐、長原和磨)

 ■最新機種開発

 茨城県つくば市の国立研究開発法人「農業・食品産業技術総合研究機構」の研究農場で1月15日、最新のロボットトラクターが公開された。

 運転席は無人だ。離れた場所にいる職員がタブレット端末で発進・停止を操作する。畑の端まで来ると素早くUターンし、あっという間に畑を耕し終えた。一連の動きはモニターで監視可能で、2台同時に操縦することもできる。

 大手農機メーカーも最新機種の開発に力を入れている。クボタは自動で走行し、田畑を耕すトラクターの試験販売を始めた。人工衛星から位置情報をとらえるなどして、誤差数センチという高精度での自動走行ができる。

 クボタの富山裕二・常務執行役員は「将来、衛星情報や気象データなど様々な情報をAIが総合的に分析し、ロボット農機が自動で作業を行う『無人農業』を実現できる」と意気込む。ヤンマーや井関農機も自動運転トラクターを販売する。

 小型無人機「ドローン」の活用も進んでいる。農業用ドローンは、農薬散布や生育状況の監視だけでなく、専用の画像分析ソフトを使って病害虫の発見に役立てるなど用途が広がっている。

 コメ作りでは、あらゆるものをインターネットにつなぐ「IoT」に対応した水田の給排水バルブが登場している。スマートフォンで水田の給水弁と排水弁を自動で開け閉めでき、水位を自動で調節する。

 ■「稼ぐ農業」へ

 政府の実証実験では、生産額を1割以上増やす一方で、生産コストを2割以上減らすことを目指すなど「稼ぐ農業」に向けた取り組みを行い、農家らの見学も受け入れる。吉川農相は「スマート化は農業を劇的に変えていく可能性を秘めている」と期待する。

 ただ、農家には期待と不安が交錯する。秋田県大仙市の須田省悟さん(68)は、約4ヘクタールの農地で主にコメ作りを営んでいる。「年々、農作業は大変になっており、自動化されれば負担は大きく減るだろう」と話す一方で、「自動運転トラクターなどは高額すぎて、小規模農家では採算が取れない」と懸念する。

 先端農機の導入に向けたコストは大きい。クボタが試験販売している自動運転トラクターは1000万円前後で、有人機より5割ほど高い。価格が下がるには、導入農家が増えて量産が進むことが必要となる。

 農業は、農家が長年蓄積した経験や知恵に支えられてきたため、先端農機の導入は「自分のキャリアを否定されると感じる農家も多い」(農協関係者)との見方もある。スマート農業に詳しい北海道大の野口伸教授は「スマート農業の普及には、『稼ぐ農業』につながることを農家に見せていくことが欠かせない」と指摘する。

市場開放、広大な農地 海外も導入…担い手不足の日本 普及期待

 海外でもそれぞれ独自の事情から、スマート農業の取り組みが進んでいる。

 オランダでは、1980年代以降に欧州で市場開放が進み、他国からの農産物流入が増えたことを受け、農業の効率化に取り組んだ。トマト農家などでは、大規模な温室にセンサーを取り付け、湿度や温度、二酸化炭素(CO2)濃度などをデータ化。これを自動制御システムで一括管理し、生育に最も適した環境を維持することで、トマトの単位面積あたりの収穫量は世界最高水準となった。

 オランダの国土面積は九州とほぼ同じだが、17年の農産物の輸出額は917億ユーロ(約11兆円)で日本(約8000億円)の10倍以上だ。

 米国では、広大な農地で大量生産を行う必要から、ドローンや人工衛星の活用が進んでいる。人工衛星で撮影した画像から土壌の状態を分析し、適切な肥料の量などを農家に伝えるといったサービスが活発だ。

 日本では、農家の高齢化と担い手不足という事情が、スマート化を後押しする可能性がある。

 農林水産省によると、18年の農家の平均年齢は66・8歳で、65歳以上の割合は約7割に上る。農家や農業法人などの「農業経営体」は、10年前に比べて3割以上減った。

 17年の農業総産出額は9・2兆円と近年は増加傾向で、一定の効率化は進んでいる。だが、政府は農林水産物の輸出を19年までに1兆円に伸ばす目標を掲げており、今後も農業の効率化や担い手確保は必要だ。ロボット導入や自動化が進めば、農機の操作などに習熟する必要性が低下するため、若者や女性、障害者も含めて新たに農業に就きやすくなる。

 日本総合研究所の三輪泰史氏は「スマート化で『農業は大変』という印象も薄れ、新しい農業像が見えてくる」と指摘している。

420373 1 経済 2019/02/03 09:23:00 2019/02/03 09:25:50 2019/02/03 09:25:50 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/02/20190202-OYT1I50086-T.jpg?type=thumbnail

アクセスランキング

読売IDのご登録でもっと便利に

一般会員登録はこちら(無料)
ページTOP
読売新聞社の運営するサイト
ヨミダス歴史館
ヨミドクター
発言小町
OTEKOMACHI
元気ニッポン!
未来貢献プロジェクト
The Japan News
美術展ナビ
教育ネットワーク
活字・文化プロジェクト
よみうり報知写真館
読売新聞社からのお知らせ