[インサイド財務省]第14部 金融<6>「脱・役所」の金融庁人事

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弁護士、銀行…民間出身25%

金融庁が入居するビルに登庁する職員ら(26日、東京都千代田区で)
金融庁が入居するビルに登庁する職員ら(26日、東京都千代田区で)

 弁護士や公認会計士、アナリスト、銀行員。13日夜、金融庁が入るビルの35階にある宴会場に、様々な肩書を持つ約100人が集まった。金融庁監督局に在籍した経験がある金融のプロたちだ。

 かつて机を並べた官僚たちと年1回、旧交を温める会合。金融庁にとっては「役所の組織を理解したうえで再び民間で活躍する人の声を聞く貴重な機会」(幹部)である。監督局長の栗田照久(1987年、大蔵省入省)や地域金融機関担当の審議官・油布志行ゆふもとゆき(89年、大蔵省)らが顔を出し、情報交換の輪が広がった。

 出席した一人で金融機関向け助言会社キャピタスコンサルティングで働く植村信保(52)は、リーマン・ショック後の2010~12年に在籍した。危機の教訓から世界中が金融機関の経営に厳しい目を向け、規制強化の流れが進んだ頃だ。

 植村は元保険アナリストで保険会社の破綻事例に精通している。リーマン・ショック直後は中堅の大和生命保険が経営破綻し、金融庁は規制見直しに向けて専門家の知見を欲していた。植村は任期を当初の予定から半年延長し、2年余りをかけて経営の健全性を維持させるためのルールづくりに取り組んだ。植村は自負する。「金融庁幹部は問題の本質を理解する能力は高いが、配置換えが早く、専門性が高いとは必ずしも言えない。民間人材の知見を生かせたのではないか」

 金融庁の民間人材は主に2パターンに分かれる。弁護士や公認会計士ら「士業」の専門家は任期つきで採用され、キャリア官僚と同様に、組織の意思決定に関わる幹部として活躍することもある。もう一つは銀行や保険会社から来る職員。検査官になるケースが多く、任期を延長したり転籍したりして長くとどまる。

 現在、金融庁には弁護士が約40人、公認会計士が約70人いる。銀行出身者やシステムエンジニアなどを加えると民間人材は400人近くに上る。職員の4分の1を占め、旧大蔵省や財務省から来た職員に迫る勢力だ。ある監査法人出身者は「外の組織に出ることで新たな人間関係をつくることができる」と語る。

 財金分離から21年。その歳月は地層のように積もってきた。大蔵省から分離して間もない1990年代後半~2000年代前半は「第1時代」。金融危機への対応で人材が不足する中、今は中央大教授となった野村修也(56)は商法の専門知識を買われて採用された。当時の検査部に配属され、後に長官になる五味広文(72年、大蔵省)の下で金融機関の検査マニュアルを策定した。野村はその後、不良債権処理を加速させた金融相・竹中平蔵の右腕となった。

 「第2時代」は2008年秋のリーマン・ショックの後。金融の国際化に合わせた法律や会計ルールの見直しが急務となった。そして「第3時代」の今。金融と最先端技術が融合する「フィンテック」への取り組みに金融機関は追われ、金融行政も民間の知見の必要性が一段と増している。

 金融庁が特徴的なのは、官と民を行き来する米国流の「回転ドア」式人事や、抜てき人事が他省庁よりも目立つ点といえる。今、役に立つ人材かどうかが評価の基準だ。

 金融機関に対する行政処分権を握る監督局で人事を差配する総務課長の堀本善雄は、1990年に大蔵省に入省した後、金融庁に出向した。2008年に霞が関を去り、いったんは外資系経営助言会社に転じた経歴を持つ「出戻り組」だ。第一勧業銀行出身の石田諭(44)は、金融庁で地域金融企画室長を務め、6月には南都銀行(奈良県)の副頭取に就く。

 14年、地方銀行に精通する財務局採用キャリアの西田直樹(82年)を地域金融担当の審議官に起用した。大蔵省の本省採用以外の職員では初の抜てき人事だ。18年には地銀の経営体質を強化する地域金融生産性向上支援室の室長に、広島銀行から3年前に転職してきた日下くさか智晴(57)を充てた。

 片や財務省は、主計局や主税局でふるいにかけられ、生き残った者が幹部になる「純粋培養」がいまだ色濃い。11年度に初めてキャリアの社会人採用を行い、12年度まで男性3人を採用したが、その後は途絶えた。学校法人「森友学園」を巡る決裁文書の改ざん問題などを受け、今年1月に人事改革の一環として金融機関に勤める30歳代の男性を採用した。実に7年ぶりの社会人採用だった。

 「年功序列、終身雇用」にとらわれない金融庁の様式には不安もある。財務省出身の幹部は「専門家を増やすことも大事だが、それだけでは不十分」と語る。足りないものは、権謀術数が渦巻く永田町や霞が関での調整力にほかならない。

 望ましい政策を実現するには、国会で法律を通さねばならない。専門家の正論だけでは対処できない世界は、「兄貴分」の財務省に一日の長がある。

 霞が関の常識に挑戦する金融庁。それが時には弱みとなるかもしれない。(敬称略)

 

[Q]金融庁志望 特徴は…金融機関と併願 目立つ

 Q 金融庁の新卒採用の状況は。

 A キャリア官僚となる総合職を毎年15人前後採用しており、東大や慶大、早大出身者が多い。国家公務員志望というより、金融界に関心を持つ人が多く、金融機関との併願が目立つ。官庁は金融庁のみという受験者もいる。

 国際会議への出席など、若くして海外経験を積めるチャンスの豊富さや、霞が関の官庁の中では、民間企業に近い職場の雰囲気が好まれているようで、近年、志望先としての人気が高まっている。

 Q 庁内で人気の部署は。

 A かつては、メガバンクや地方銀行の監督権限を握る監督局の人気が高かった。最近では、国際会議を担当する国際室や「フィンテック」など新たな金融サービスを所管する部署など、希望は多様化しているという。

 人気ドラマ「半沢直樹」では、金融機関に高圧的に接する検査官が話題となった。過去には実際に、こうした検査官もいたが、現在は、対話を通じて改善を促すスタイルに変わりつつある。

466705 1 経済 2019/02/28 05:00:00 2019/02/28 05:00:00 2019/02/28 05:00:00 金融庁が入るビルに登庁する職員ら(26日午前8時43分、東京都千代田区で)=黒木健太朗撮影 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/02/20190228-OYT1I50010-T.jpg?type=thumbnail

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