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[安保60年]第2部 経済安全保障<4>供給網 中国排除を提唱…米「信頼できる国で構築」

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 新型コロナウイルスの感染拡大で、サプライチェーン(部品供給網)を中国に依存するリスクが浮き彫りになった。

 「マスクを日本で製造せず、中国からの輸入に依存していたのが痛かった」

 政府高官は、こう悔しがる。

 国家安全保障局の幹部も、「特定の国に依存しないサプライチェーンの再構築が必要だ」と語る。

 実は、サプライチェーンの再構築は昨年から、日米で議論されていた。

 「米国は『グローバル・トラステッド・ネットワーク(信頼できる国際ネットワーク=GTN)』を早期に構築したい」

 2019年暮れ、日本政府高官は米国務省幹部から、こんな耳慣れない言葉を聞かされた。通信の基地局や海底ケーブルといった重要インフラ(社会基盤)を含むハイテク製品・技術について、日米や英豪などの有志国の中で信頼できるサプライチェーンを再構築するという構想だった。

 米国は次世代通信規格「5G」で中国企業の排除を進めていたが、GTNはほかの重要物資・技術のサプライチェーンからも幅広く、中国を排除しようとするものだった。

 こうした兆候はあった。米国のペンス副大統領は18年10月の演説で、中国を「米国の技術を盗む黒幕」と名指しで批判した。米商務省はこれに合わせ、中国の半導体メーカー「福建省晋華集成電路(JHICC)」に対し、米国の部品、技術の輸出を事実上禁止した。

 JHICCは、「DRAM」と呼ばれる半導体メモリーの生産を主力とし、半導体の国産化推進を進める中国の中核企業だ。

 米国がJHICCに半導体装置の輸出を止めても、その抜けた穴に日本企業が進出してしまっては元も子もない。経済産業省関係者は「米商務省から、歩調を合わせるよう水面下で『圧力』があった」と証言する。要請を拒めば、利敵行為と見なされて制裁をかけられかねない恐怖を感じたという。

 米国務省幹部が昨年暮れに示した構想は、信頼できる企業をリスト化し、それ以外の企業は使わせないという非常に厳しい内容で、日本政府には動揺が走った。

 日本の産業界では、ハイテク技術が流出する恐れのない分野では日中協力を進めるべきだという考えが主流だ。自民党のルール形成戦略議員連盟(会長=甘利明・元経済再生相)はこうした協力分野の例として、中古車市場における低燃費車の流通促進を挙げていた。

 今年1月、甘利氏のもとを在京米大使館員がひそかに訪ねた。サプライチェーンについて話が及ぶと、甘利氏は「中国市場を完全に無視することはできない。デカップリング(切り離し)させる分野をはっきりさせることが重要だ」と指摘した。

     ◇

 今年初めまでの日米の動きはいずれも、ハイテク技術・製品が対象で、マスクのような汎用はんよう品は念頭になかった。

 米国は、新型コロナの感染拡大で一時、マスクなど医療用物資の調達もままならなかったことにショックを受け、戦略の練り直しを迫られている。日本も同じ状況だ。

 ルール形成戦略議連事務局長の中山展宏・外務政務官は、「中国はマスクですら、外交上の戦略物資に位置づけている。サプライチェーンのどの部分で中国依存が進み、脆弱ぜいじゃくなのかをまずは検証するべきだ」と話す。

 米国務省が唱え始めた「中国抜き」のサプライチェーン構想は、今は実現が見通せない状況だ。だが、コロナ禍を克服した暁には、安全保障のリスクを減らした信頼できるサプライチェーンの確保を日米でどう進めるかが問われることになる。

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1209530 1 経済 2020/05/09 05:00:00 2020/05/09 05:00:00 2020/05/09 05:00:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2020/05/20200509-OYT1I50008-T.jpg?type=thumbnail

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