「金」がセオリー破りの高騰…株価回復とともに値上がり、最高値を更新
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金の価格が異例の上昇基調を続けている。安全資産とされる金は、株価とは逆方向の値動きをするとされるが、今春以降、株価の回復とともに値上がりし、最高値を更新した。新型コロナウイルスの感染拡大を巡る根強い不安が、相場の「常識」とは逆の現象につながっているようだ。

東京商品取引所では13日、金先物の代表的な取引価格の終値が1グラム=6214円と、6200円を超える最高値圏で取引を終えた。9日には一時6273円と、取引時間中として1982年の上場以来の最高値を更新した。新型コロナの影響で急落した3月半ばから2割超の上昇だ。
金地金も人気だ。田中貴金属工業では9日には小売価格が1グラム=6894円と最高値を更新した。13日も6848円と高値を維持した。「来店客が増え、高値でも買う人が目立つ」(同社)という。
金は戦争や経済危機などの有事に強い「安全資産」として、好況時に資金が集まり有事には売られる株式とは対照的な値動きをするとされてきた。1980年代のイラン・イラク戦争時や、リーマン・ショックやギリシャ危機が相次いだ世界的な経済不安を受けて2010年頃に高騰したことが知られている。
ここ数か月、相場の常識に異変が生じている。3月の新型コロナの感染拡大に伴う株価暴落の際には、投資家があらゆる金融資産を手放したため、金価格も株価と同様にいったん下落。その後、株価が回復しても、金も連動するように値上がりしてきた。
異例の値動きの理由の一つが、先行きに対する不安だ。株価が回復しても、実体経済の回復にはかなりの時間を要するとの見方が強い。楽天証券経済研究所の吉田哲コモディティアナリストは「株価がいつか大きく下落するという懸念が、金の人気を後押ししている」と話す。
各国の大規模な金融緩和の影響も大きい。金は利子がつかないことがデメリットだが、世界的な低金利で国債の運用利回りも低下し、相対的に金の魅力が上昇した。「あふれた投資マネーが金に向かっている」(商品調査会社マーケットエッジの小菅努代表)という。
ニッセイ基礎研究所の上野剛志上席エコノミストは「感染拡大や米中関係の悪化など懸念材料も多く、当面、金の人気は続く」と話している。