「東京一極集中」が終わり、コロナ後は「ローカル志向」の社会か

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◆…京大こころの未来研究センター教授 広井良典さん…◆

 成長から成熟へ、経済効率一辺倒から環境や福祉にも配慮した社会へ――。約20年前、「定常型社会」という言葉で、いち早く社会の変革の必要性を指摘したのが広井良典・京大こころの未来研究センター教授だ。最近はAI(人工知能)を活用した研究で、「都市集中型」ではなく「地方分散型」の重要性を提唱し、注目を集めている。東京一極集中の是正と地方分散型への転換は、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、7月に出された政府の「骨太の方針」(経済財政運営と改革の基本方針2020)でも実現が必要とされたテーマだ。人口減少、貧困・格差の拡大、膨らむ財政赤字、環境破壊など、持続可能性に黄信号が とも っているように見える日本。その針路や岐路について広井教授に聞いた。(編集委員 猪熊律子)

「拡大・成長」でなく、「成熟・定常」を主張する理由

撮影をした愛宕神社(東京都港区)は「お気に入りの場所」の一つ。「鎮守の森を自然エネルギーの整備やホスピスなどに結びつけるプロジェクトを、ささやかながら進めています」=鈴木竜三撮影
撮影をした愛宕神社(東京都港区)は「お気に入りの場所」の一つ。「鎮守の森を自然エネルギーの整備やホスピスなどに結びつけるプロジェクトを、ささやかながら進めています」=鈴木竜三撮影

 時代認識の話から始めたいのですが、昭和は「集団で1本の道を登る時代」だったと思います。人口も経済も拡大を続け、経済成長という明確な目標に向かって、みんなが一本道を登っていた。それはそれでうまくいきました。

 平成は「先送りの時代」です。平成半ば過ぎから人口が減り、経済も低成長となったのに、引き続き一本道を登ろうとした。経済も大事だが環境や福祉に配慮した成熟社会にかじを切るべきだったのに、そうはなりませんでした。昭和の成功体験が強烈だったからです。

 令和はどうか。持続可能で豊かな成熟社会に移れるかどうかの分岐点が今です。「24時間頑張れ」と言われて競って山を登り、山頂に立ったら視界は360度開け、道は無数にあることがわかった。今後は各人が多様な形で個性や創造性を発揮する時代といえます。

 ここでお断りしておきたいのは、私は拡大・成長を否定しているわけではないことです。ただ、ひたすら量的拡大を目指し、成長を目的化するような経済のあり方には疑問を感じます。

 経済成長さえすれば財政赤字があっても大丈夫、との声も聞きますが、人口が減り、地球資源の有限性が顕在化する中で、ノルマ主義的な拡大路線は各人の首を絞めるだけです。競争で無理をした企業は倒産や不祥事を起こし、働いている人は過労死やうつ病を患う。仕事と子育ての両立もままならない。結果的に少子化が進み、人口が減り、成長に必要な需要が縮小して、経済にも悪影響が出る。「経世済民」といわれるように、経済には国を治め、人民を救うという相互扶助的な意味があることを忘れてはならないと思います。

 もう一つお断りしておきたいのは、拡大・成長から成熟・定常へと言うと、何か進歩の止まった退屈な社会と思われがちですが、そうではないということです。人類の歴史を見ると、過去3回、この移行のサイクルが起きており、移行期には大きな精神や文化の革新が起きています。

 1回目は、狩猟採集が始まり、生産の拡大が起きて、それが落ち着いた約5万年前頃。人類学や考古学でいう「心のビッグバン」が起こりました。絵画、彫刻、装飾品など内面の豊かさを表す芸術品や自然信仰が登場した。ラスコーの洞窟壁画などもそうです。

 2回目は紀元前5世紀頃で、「枢軸時代」「精神革命」と呼ばれます。農耕文明が発展しましたが、やがて森林枯渇や領土争いが起き、普遍的な思想や宗教が生まれました。仏教、儒教、老荘思想、ギリシャ哲学、ユダヤ思想などです。資源の浪費や自然搾取を伴わない文化的発展が求められたと考えられます。3回目が今。工業化、産業化で拡大・成長が進んだものの地球環境の有限性にぶつかり、新たな転換が求められています。

「地方分散型」のほうが、持続可能に優れる

中心部から自動車を排除した「歩いて楽しめる街」(ドイツ・エアランゲン=人口約10万人。広井教授提供)
中心部から自動車を排除した「歩いて楽しめる街」(ドイツ・エアランゲン=人口約10万人。広井教授提供)

 昭和は人口と経済が拡大した時代と言いましたが、「東京一極集中の時代」でもありました。1975年に大ヒットした松本隆さん作詞の「木綿のハンカチーフ」という歌をご存じですか? ♪恋人よ ぼくは旅立つ 東へと向う列車で……。あの歌です。

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1413581 0 経済 2020/08/16 09:17:00 2020/08/16 17:55:33 2020/08/16 17:55:33 「あすへの考」用、京都大学こころの未来研究センター所長、教授、広井良典さん(7月6日、東京都港区の愛宕神社で)=鈴木竜三撮影 https://www.yomiuri.co.jp/media/2020/08/20200809-OYT1I50037-T.jpg?type=thumbnail

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