経済同友会夏季セミナー 「ウィズ/アフターコロナ」時代の日本の展望と未来への選択

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2日間にわたり、活発な議論が続いた経済同友会の「夏季セミナー」
2日間にわたり、活発な議論が続いた経済同友会の「夏季セミナー」

 企業トップや有識者が政治や経済の課題などを議論する経済同友会の「夏季セミナー」が9月10、11の両日、東京都港区のグランドプリンスホテル新高輪で開かれた。日本の方向性を議論する上で土台となる民主主義のあり方や、新型コロナウイルスの感染拡大で取り組みの加速が求められる分散型社会などについて、活発な議論が交わされた。「ウィズコロナ」を前提にした企業活動や社会のあり方についても様々な意見が出た。

 ◎経済同友会の「夏季セミナー」は1986年から毎年開催され、今年で35回目。例年7月に軽井沢で行われているが、今年は新型コロナの影響で東京開催となった。

 

あいさつ

日本のあり方議論を 経済同友会代表幹事 桜田謙悟氏

 今回のセミナーでは、これからの日本のあり方を探る上で、最も重要な民主主義を再度見つめるために、若者の政治参加について議論していきたい。この国の形を議論する際、必須となる地方の活性化、分散型社会、その裏返しである東京への一極集中についても取り上げる。

 日本はサステナビリティー(持続可能性)という観点では危機にあると言っても過言ではない。人口減少や自然災害、経済成長率の低迷。課題は山積している。にもかかわらず、私たちは今の生活に何となく安住し、新型コロナウイルスとの戦いに忙殺されている。

 世界に目を向ければ、グローバリズムの負の側面である富の過度な偏在で、格差や分断が世界で広がっている。「グレートリセット」という言葉が叫ばれ、世界中で新しい資本主義を模索する動きが出ている。

 日本にも貢献できることがある。長い歴史の中で培ってきた自然との共生の価値観は、まさに持続可能性につながる。

 企業の価値を金銭的な利益だけでなく、社会全体の利益への貢献なども加えた評価軸でみる。そうした社会構造を、日本のリーダーシップで作りたい。幅広いステークホルダー(利害関係者)と議論を深めていく。

次代の声 社会を変える

 【特別セッション〈1〉】「若者の政治参画の促進と政治のデジタル化」

司会・デジタルハーツホールディングス社長CEO 玉塚元一氏

 「未来選択につながる民主主義」と題したセッションでは、若者の政治参画の促進などについて議論が交わされた。

 

「SNSから投票」も一手 東大教授 谷口将紀氏

谷口将紀氏
谷口将紀氏

 国際比較すると日本の若者の投票率は低い。負担の分かち合いが政治の本質になる時代に、投票者が高齢世代に偏ると、政策も高齢者偏重になる可能性がある。高齢世代と働く世代が結託し、社会に出て行く将来世代に巨大なツケを回しているという指摘をする人もいる。

 若者の情報源は、LINEやユーチューブなどだ。投票率を上げるため、インターネット投票を可能にするなら、SNSやネットのトップページから投票できるように、プラットフォーマー側の協力も不可欠だ。

充実望まれる主権者教育 日本若者協議会代表理事 室橋祐貴氏

室橋祐貴氏
室橋祐貴氏

 若者は政治に関心がないと言われるが、調査すると関心は高いことが分かる。だが、自分が政治に関わっても、政治は変わらないと思っている人が多い。

 選挙権は18歳に下がったが、被選挙権は変わっていない。若者が立候補できる環境づくりは重要だ。海外では、政策決定の過程で、国民の各年代の意見を取り入れる仕組みがある。政府の審議会などに若者が少ないことも問題だ。政治への関心を高め、投票に行く意味をもっと感じてもらうため、主権者教育に力を入れるべきだ。

多様な意見 知る機会必要 連合事務局長 相原康伸氏

相原康伸氏
相原康伸氏

 若者の投票率が低いのは、国政選挙だけでなく、地方選挙も同じだ。多くの組合員の投票率は高いが、政治への関心が高いわけではない。(組合側が)思い切り背中を押して投票に行ってもらっているのが現実だ。

 選挙を経て決まったことは、財政運営でも社会保障でも、自分の身に降りかかってくる。

 学校教育では、政治的な「中立性」が重視される。ただ、社会は多様な意見を持つ人で構成されている。主権者教育では、そうした現実に出会う仕掛けをつくることが大切だ。

若い議員 増やしてこそ 国際政治学者、山猫総合研究所代表 三浦瑠麗氏

三浦瑠麗氏
三浦瑠麗氏

 今の政党は、若者に適切な論点を提示できていないのではないか。外交や安保など、政党が対立している分野に若者は大きな関心を持っていない。一方、社会政策など、おそらく彼らが関心をより強く持っている分野はあまり争点化されていない。

 インターネット投票には反対だ。投票所に歩いて行く途中に、誰に投票するのかを考える人が結構いる。このプロセスが大切だと思う。

 若い議員を増やすことが必要だ。それによって、年配の議員の行動も変わっていく。

数値目標設定 提案も――会場から

 セッションには大学生もオンラインで参加した。「私たちの世代が声を上げるだけでなく、若者の政治参画に向けて、社会全体で継続的な議論が必要だ」といった意見が出たほか、「若者は、SNSで得た情報を基に軽い気持ちで投票してしまう恐れがある」との声もあった。

 会場からは、「主権者教育の充実や、プラットフォーマーの協力は効果も大きいし、議論を深掘りする余地があるのではないか」(大和総研の熊谷亮丸チーフエコノミスト)などの意見が出た。オイシックス・ラ・大地の高島宏平社長は、「政治家の何%は30歳代にするといったようなことはハードルが高いが、政府の有識者会議では20%は若い世代にするとか、やれることはある」と指摘した。

 

「一極」回避デジタル力で

 【特別セッション〈2〉】「分散型社会への選択肢と首都・東京の価値」

司会・ブイキューブ社長CEO 間下直晃氏

 分散型社会の可能性を探るセッションでは、国と地方、それぞれが果たすべき役割などについて議論が行われた。

 東京都の宮坂学副知事は、「新型コロナで電車の乗車率は減少し、一方でネット空間の利用率は上がった。デジタル化で土地に縛られなくなることが、地理的な分散につながる」と述べ、デジタル環境の整備を進めていく必要性を強調した。

 地方分散が進まない理由について、三重県の鈴木英敬知事は、「国と地方の両方に責任がある。国の仕組みは中途半端で、地方は(自治体ごとに)温度差があり、本気度が足りないところがある」と指摘した。

 白馬インターナショナルスクール設立準備財団の草本朋子代表理事は、「地方の側の当事者意識のなさが大きい」との見方を示した。

 会場からは、東京への一極集中について、生産性向上につながるとの指摘や、国際的な都市間競争に勝つためには一定程度の集積は必要との意見もあった。

 新型コロナで進んだテレワークを巡っては、「オンラインが普通になると、働き方が一気に多様になる。雇用形態などにも影響し、従来通りの人材採用では企業は競争を勝ち抜けない」(フリーランスへの業務委託を仲介するランサーズの秋好陽介社長CEO)との指摘もあった。

 新型コロナが社会に与える影響について、ヤフーの安宅和人CSO(最高戦略責任者)は、「新たな感染症はまたやってくる。街や社会をつくり直すべき時だ。次の世代に何を残せるかが問われている」と危機感を示した。

 会場からは、読売新聞の清水美明編集委員が、「東日本大震災の時にわき起こった、つながりや絆などのさまざまな機運は、気が付くとすっと消えていた。分散化やデジタル化の機運も同じ道をたどらないか」と懸念を示した。

 宮坂氏は「テレワークなど、デジタルはリアル(職場での業務など)を代替する大事なものだ。新型コロナで普及が加速しているので、この流れを確実にしていく必要がある」と応えた。

「SDGs」経営の軸に

 【その他セッション】

 夏季セミナーでは、コロナ禍での経済・社会のあり方や、新政権への期待と課題、中長期的に目指すべき企業戦略などについても白熱した議論が行われた。

 新型コロナウイルスの収束が見通せず、企業業績への悪影響が長期化する中、「ウィズコロナ」を前提とした制度づくりが必要との認識が多数示された。小林慶一郎・東京財団政策研究所研究主幹は、「企業が事業再編を行う手続きを簡素化するなど、構造改革のための仕組みづくりが必要だ」と指摘した。

 緊急事態宣言などは経済に与える影響が大きすぎるとして、「経済を回しながら、医療体制の充実に資金を回すべきだ」などの意見も出た。

 次期政権が取り組むべき課題については、東芝の車谷暢昭のぶあき社長最高経営責任者(CEO)が、「踏み込んだ成長戦略、規制改革を期待したい」と述べるなど、大胆な改革をスピード感を持って進めるよう求める声が相次いだ。日本への信認を維持するため、財政再建への道筋を示すことが必要との意見も出た。

 桜田謙悟代表幹事は、「政策目標を数値で示し、実現時期を明示し、政策を選択した理由についても説明責任を果たしてほしい」と要望した。

 今後の企業経営や資本主義のあり方についても議論が交わされた。国連が提起した「SDGs」(持続可能な開発目標)を一つの軸として経営に当たるべきだとの声が複数の参加者から上がった。

 企業の競争力向上や技術革新のスピードアップが不可欠との認識も示された。AGCの石村和彦取締役は、「世界中から資金と人が集まる米国、国家資本主義的に技術革新を進める中国などとの競争にどう勝ち残るか考える必要がある」と問題提起した。

「未来選択会議」政策の論点 広く提示へ

 経済同友会は、今回の夏季セミナーで新たな会議体となる「未来選択会議」を発足させた。テーマごとに数回の議論を経て、日本の将来を見据えた様々な論点や政策の選択肢などを政府や国民に提示する。新たな政策形成プロセスとして影響力を高めたい考えだ。

 会議では、新型コロナウイルスで明らかになった社会の課題や、米中対立をはじめとする地政学的な緊張が高まるなかでの日本の立ち位置、財政健全化に向けた道筋など、中長期的な日本のあり方について議論を交わす。企業や有識者、政界関係者に加え、労働組合、学生など幅広い層が参加することで、政府への働きかけを強めていく。

 桜田謙悟代表幹事は、「未来選択会議の見解と、同友会の意見が異なってもかまわない」と強調。「未来選択のためのプラットフォームとして、存在感あるものとしていきたい」と意気込んだ。

 

商慣行・働き方見直し 「アピール2020」採択

 経済同友会は、新型コロナウイルスの感染拡大の抑止と経済活動の両立、新政権に期待する政策などを盛り込んだ「夏季セミナーアピール2020」を採択した。

 新型コロナでは、検査体制や医療提供体制の拡充の必要性を強調。店舗への補償を伴う休業指示など、一定の強制力を持つ施策を行うため、新たな法整備が必要と指摘した。

 企業側も、押印や対面などを原則とする商慣行の見直しや、時間や場所にとらわれない働き方が可能となるよう、人事制度などを改革していくことが必要だとした。

 今後の企業経営については、「SDGs」や次の世代に目配りした経営の重要性を強調した。

 新政権に対しては、「デジタルガバメントの早期構築」や「経済のデジタル化に即した規制体系の刷新」などを求めた。

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1520308 0 経済 2020/10/04 05:00:00 2020/10/04 05:00:00 2020/10/04 05:00:00 経済同友会「夏季セミナー」で、開会のあいさつをする桜田代表幹事。企業トップらが政治や経済の課題について議論する経済同友会の「夏季セミナー」が、2日間の日程で始まった。東京都港区で。2020年9月10日撮影。 https://www.yomiuri.co.jp/media/2020/10/20201003-OYT1I50044-T.jpg?type=thumbnail

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