反理想郷になってしまったアメリカと中国、コロナ禍での「国民の意識」も真逆…経済学者・岩井克人氏

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 春先から続く新型コロナウイルスの世界的流行が長期化し、私たちは出口のまだ見えないコロナの時代のただ中にある。世界のどの国・地域もウイルス感染の拡大の抑制に努めながら、経済の復興に向けた方策を模索しているようだ。
 日本の時勢は依然として自粛で、気分は晴れない。貨幣論や会社論など独創的な思想で知られる経済学者岩井克人氏は現下の事態をどのように見ているのだろう。岩井氏はコロナ禍を巡っては沈黙してきた。
 インタビューの冒頭、「少し落ち着いてきた今の段階なら何かお話しできるかと思いましたが、言えることはあまりないということが一つ分かった」と宣言しつつ、独自の考えを展開してくれた。(編集委員 鶴原徹也)

単に運不運に左右されたとしか言いようがない

 欧米は感染拡大を抑えるために罰則を伴う外出制限など日本より厳しい措置を講じました。しかし被害は日本よりも甚大です。

 感染状況を人口100万人あたりの死者数で見ると日本は12人、米国は623人。欧州で際立った取り組みをしたドイツは114人。日本との差は桁違いです。

 日本の被害の「少なさ」を巡り、日本人の清潔好きを理由に挙げる向きもありますが、疑わしい。アジアを見れば、中国は3人強、韓国は8人弱、台湾は0・3人で日本より少ない。いずれも日本以上に清潔好きだとは思えません。

 人種の違いも説明にならない。米国でアジア系住民の死亡率は白人と同程度です。

いわい・かつひと 経済学者。国際基督教大特別招聘教授、東京財団名誉研究員、東大名誉教授。研究は法人論、信任論、言語・法・貨幣論など広範囲に及ぶ。著書は「ヴェニスの商人の資本論」「不均衡動学の理論」「貨幣論」「二十一世紀の資本主義論」「会社はこれからどうなるのか」など多数。
いわい・かつひと 経済学者。国際基督教大特別招聘教授、東京財団名誉研究員、東大名誉教授。研究は法人論、信任論、言語・法・貨幣論など広範囲に及ぶ。著書は「ヴェニスの商人の資本論」「不均衡動学の理論」「貨幣論」「二十一世紀の資本主義論」「会社はこれからどうなるのか」など多数。

 世界はこの疫病にかかりやすい群とかかりにくい群に大別できる。その差は経済や社会、文化や思想の観点では説明できない。単に運不運に左右されたとしか言いようがない。それが私の感想です。

 米国の人類生態学者ジャレド・ダイアモンド氏の著書「銃・病原菌・鉄」を想起します。欧州人が米大陸の先住民を容易に征服できたのは、非常に広大なユーラシア大陸にいたからだと主張している。同大陸には多種多様な家畜がいて、人間は家畜由来の多くの感染症に対する免疫を備えるに至った。家畜の種類の少ない米大陸の先住民は免疫が乏しく、欧州から持ち込まれた疫病の犠牲になった――。地理の差が免疫の強弱に結びつき、世界史を大きく変えたのです。

 中国人は色々な野生動物を食し、薬としても服用している。今回も発生源は野生動物と見られています。日本は地理的に中国に近い。その結果、日本人は中国発の疫病に対し、免疫を備えていたのかもしれません。あるいは交差免疫を作るBCGを接種していたからかもしれません。

 ただ運の良い群の中では日本の対策は遅れ、被害は相対的に大きかったことは確かです。

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1538975 0 経済 2020/10/11 08:54:00 2020/10/11 08:54:00 2020/10/11 08:54:00 「あすへの考」用、岩井克人さん(9月9日、東京都港区の東京財団政策研究所で)=鈴木竜三撮影 https://www.yomiuri.co.jp/media/2020/10/20201005-OYT1I50054-T.jpg?type=thumbnail

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