テレワーク+農業、米どころで旗揚げ…「相性いい」新たな働き方提案

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 新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、4月に東京から新潟県十日町市に拠点を移したホテル経営阿久沢剛樹ごうきさん(56)が、担い手のいなくなった市内の棚田でコメ作りを始め、今月初めての収穫を迎えた。「テレワーク+農業」を掲げて株式会社も設立。「新たな働き方として、自信を持ってみんなに勧めたい」と話す。

柳さん(右)らと収穫したコシヒカリのはざかけをする阿久沢さん(3日、十日町市の「儀明の棚田」で)
柳さん(右)らと収穫したコシヒカリのはざかけをする阿久沢さん(3日、十日町市の「儀明の棚田」で)

 斜面に広大な田んぼが広がる同市の「儀明ぎみょうの棚田」に3日午前、「サク、サク、サク」と鎌で稲を刈る音が響いた。雨が続いて機械が使えず、阿久沢さんは「大部分を手で刈り取ることになった」と泥がついた顔で笑う。この日は地元住民や東京の友人ら約10人と夕方まで稲刈りに汗を流した。

 阿久沢さんは栃木県小山市出身。東京を拠点に、外資系の銀行でホテルの経営を担当していたが、2008年にリーマン・ショックが発生した。従業員を次々とリストラせざるを得ず、抑うつ症でカウンセリングを受ける日々を送った。

 そんな時、十日町市で開催される「大地の芸術祭」の広告をウェブサイトで見つけ、09年夏に訪れた。棚田を初めて見て、「日本の原風景。理屈抜きで癒やされた」。同年秋には稲刈りイベントにも参加。東京へ帰る新幹線の中で心地よい疲れが全身を包み、「棚田のおかげで生きている実感が取り戻せた」と振り返る。

 15年には、目の前に棚田が見える同市蒲生地区の古民家を購入し、18年に住宅兼農家民宿「トロノキハウス」をオープンさせた。平日は東京でホテル経営の仕事をしながら、土日は民宿の営業をする「2地域居住」を続けてきた。

 昨年5月、高齢化で担い手がいなくなった儀明の棚田を引き継がないかと打診され、「憧れの棚田でコメ作りができるのはうれしい」と引き受けた。さらに「副業として農業ができると示せれば、担い手増につながる」と、地元住民や元地域おこし協力隊員ら4人と今年3月、株式会社「トロノキファーム」を設立した。

 全員に本業の仕事があるため、農作業は「隙間時間にできる人が」がモットー。資金や手間をかけず、無農薬、無肥料で育て、フェイスブックで作業内容や生育状況を情報共有している。

 元蒲生地区長で、理容業を営みながら、15年ほど前からコメ作りを続ける柳芳健よしたけさん(65)は迷わず社員になった。柳さんは「こんなに棚田を愛してくれる人を手伝わないわけにいかんでしょ」と笑顔で話す。

 新型コロナの影響で、阿久沢さんは4月から東京の仕事は全てテレワークで行い、十日町市で毎日過ごすようになった。農作業は毎日早朝2時間程度で、今までの通勤時間と変わらないという。収穫したコメは自分で食べたり、どぶろくにして販売したりする予定だ。

 「普通のテレワークは家にこもりがちになるが、農作業で体を動かせて健康的」と阿久沢さん。「テレワークと農業は相性がいい。新たなライフスタイルが通用すると証明したい」と意気込んでいる。

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1553040 0 経済 2020/10/16 12:40:00 2020/10/16 14:01:51 2020/10/16 14:01:51 柳さん(右奥)らと収穫したコシヒカリのはざかけをする阿久沢さん(手前)(10月3日午後0時39分、十日町市の儀明の棚田で) https://www.yomiuri.co.jp/media/2020/10/20201016-OYT1I50020-T.jpg?type=thumbnail

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