全国的に珍しい「県庁所在地の駅前温泉」復活…高速道開通で客足戻った温泉も

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 JR鳥取駅から西約10キロにあり、「鳥取の奥座敷」と呼ばれた吉岡温泉(鳥取市吉岡温泉町)。一時は客足がピーク時の1割以下まで落ち込んだが、新たな日帰り温泉施設のオープンや、近くに鳥取西道路のインターチェンジ(IC)が完成したことから、かつてのにぎわいを取り戻しつつある。

 開湯は平安時代とされ、1980年代には年間40万人を超える客が訪れていたが、施設の老朽化や後継者不足で旅館の廃業が相次いだ。しかし、鳥取西道路の吉岡温泉IC開設計画が浮上したのに伴い、老朽化した共同浴場を移転・新築しようとの機運が高まり、吉岡温泉町自治会が県などの補助を受けて、約2億円かけて整備し、2018年4月に同温泉会館「一ノ湯」をオープンさせた。

「一ノ湯をきっかけに吉岡温泉を多くの人に知ってもらいたい」と話す松浦館長(鳥取市で)
「一ノ湯をきっかけに吉岡温泉を多くの人に知ってもらいたい」と話す松浦館長(鳥取市で)

 19年5月に同ICを含む鳥取西IC―青谷IC間(17・5キロ)が開通すると、数年前には入湯客数が約2万5000人まで減っていたが、19年には同会館だけで約8万5000人が訪れた。「この町に嫁いできた16年前と比べると、信じられないぐらいの人出」と松浦聡子館長(41)。「鳥取砂丘から来ました」「白兎海岸でサーフィンをした帰り」と周辺の観光スポットから立ち寄る人や、県外からの客が増えているという。

 また、一ノ湯では、吉岡温泉が抱えていた集客面での課題の解決を図っている。湯量が豊富な同温泉は源泉掛け流しが基本で、泉温が約50度と高いのが特徴。しかし、肌がヒリヒリするほどの熱さにはまるリピーターがいる一方で、その熱さを敬遠する人もいた。

 そこで、一ノ湯では、ぬるめの浴槽を設置。松浦館長は「ぬるいお湯のおかげで、子どもから大人まで、さらに幅広い世代のお客さまに来てもらえるようになった」と手応えを感じている。

     ◇

旅館などがそれぞれ敷地内にある温泉井戸から湯を引いている鳥取温泉(こぜにやで)
旅館などがそれぞれ敷地内にある温泉井戸から湯を引いている鳥取温泉(こぜにやで)

 鳥取駅周辺も「鳥取温泉」と呼ばれる温泉地だ。県庁所在地の駅前に湧く温泉は全国でも珍しく、繁華街や住宅街の中に6軒の旅館・ホテルと公衆浴場4か所が点在する。

 温泉の発見は1904年と歴史は浅く、山陰線敷設工事の作業員宿舎で飲用井戸を掘削中に偶然、温泉が出たという。旅館や浴場がそれぞれ敷地内に温泉井戸を持っているものの、湯量はそれほど多くなく、鳥取温泉旅館ホテル組合の小谷文夫組合長(67)は「各井戸の湯量に見合ったつつましい経営をしている」と話す。

 それだけに、新型コロナウイルスの影響は大きく、小谷組合長の経営する「観水庭 こぜにや」(25部屋、定員70人)も宿泊客は「緊急事態宣言が出された4月は前年同月比で9割減。5月も同比7割減」で、予約がない日は休業することもあったという。

 同組合では、政府による観光支援策「Go To トラベル」や、飲食店を支援する「Go To イート」を弾みにしようと、11月から鳥取温泉の旅館・ホテルでの宿泊や飲食に使える独自のプレミアム付きクーポン券を発行する予定。小谷組合長は「鳥取の日常に溶け込んできた温泉。街全体を盛り上げるきっかけになれば」と期待している。(安恒勇気)

 ◆吉岡温泉/鳥取温泉 吉岡温泉は高温の単純泉。962年(応和2年)に見つかったとされ、江戸時代には鳥取藩主・池田家の湯治所になった。吉岡温泉町自治会が運営する「一ノ湯」は、藩主専用の「一乃湯」にちなんで名付けられた。鳥取温泉はとろっとした透明な湯が特徴で、泉温は45~55度と井戸によって異なる。駅前にある立地から、ビジネス客の利用も多い。

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1561725 0 経済 2020/10/20 09:44:00 2020/10/20 10:24:04 2020/10/20 10:24:04 「一ノ湯をきっかけに吉岡温泉を色んな人に知ってもらいたい」と話す松岡館長(鳥取市吉岡温泉町で) https://www.yomiuri.co.jp/media/2020/10/20201019-OYT1I50031-T.jpg?type=thumbnail

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