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♪ロバのおじさんチンカラリン…昭和30年代に全国で170店あった「ロバのパン」、今は4店

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ロバが荷車を引くイラストが目印。ワゴン車に焼きたてのパンを積んで出発する(高知市で)
ロバが荷車を引くイラストが目印。ワゴン車に焼きたてのパンを積んで出発する(高知市で)
夜明け前にカップケーキの仕上げをする武島繁さん(左)と秀子さん(高知市で)
夜明け前にカップケーキの仕上げをする武島繁さん(左)と秀子さん(高知市で)

 通販サイト「アマゾン」や宅配代行サービス「ウーバーイーツ」――。家にいながら欲しいものが簡単に手に入る。そんな時代に知らん顔を決め込むように、のんびりしたメロディーが鳴り響く。♪ロバのおじさん チンカラリン――。「ロバのパン」だ。音につられた子どもたちが一斉に家を飛び出したのは遠い昔。それが今もちゃっかり営業している。舞台裏をのぞいた。(阿部俊介)

昭和30年代の販売の様子=高知県立図書館所蔵
昭和30年代の販売の様子=高知県立図書館所蔵

 かつては本物のロバが荷車を引いていた。昭和30年代は全国で170店近く。今は本部のある京都、高知、岐阜、徳島4府県の4店が続ける。もちろんロバの姿はない。ワゴン車による移動販売に変わった。

 高知県内では、高知市瀬戸東町の武島繁さん(70)、秀子さん(68)夫婦が営む。午前0時から名物・蒸しパンやカップケーキなど約20種類500個を焼く。蒸しパンは本部から届く「パンのもと」、薄力粉、砂糖、鹿児島から取り寄せた名水を使う。「パンの素」とは謎めいているけれど、要するに膨らし粉のことらしい。

 秀子さんは「質の良い素材でシンプルに焼く。しっとり柔らかく、ずっしり重いのが特徴」と胸を張る。

 もとは繁さんの父親が1960年に始めた。当時は小型の木曽馬が活躍。繁さんは70年に加わった。「音楽を流せば人が集まった。1日に7000個近く売れたこともある」と懐かしむ。

 今は業界も様変わり。ネットや専門店、スーパー、コンビニでも手のこんだパンが手に入る。「ライバルが多くて宅配も盛んなのに続けられるのはなぜ?」。そんな素朴な質問に、繁さんが即座に答えてくれた。「早朝に作り、その日に全て売り切るからですよ」。売れる分だけ焼く。身の丈にあった経営で無駄を省くのだ。そういえば世渡りでも、分をわきまえることは大切なことだ。

 一方、販売役の榎本利男さん(68)は別の角度から「デイサービスなどを回るからかな」。たしか京都本部の桑原省三社長も「『昔の味』を喜ぶファンが支えている」と話していた。高齢化が進む高知で、まずお年寄りのハートをつかむ――。よく考えを巡らせたピンポイントの攻め方といえるだろう。

 昭和レトロも追い風に。ネットで情報を知り、県外の人が工場こうばを訪れたり、帰省の土産に買い求めたりする例が、けっこうあるらしい。

 オーテピア高知図書館で開かれている昭和30年代の高知の写真展。担当の坂本靖さん(59)は「40歳以下にはセピア色の時代が新鮮なようで」。昭和の匂いをかぐわしいと感じる世代が思いのほか、数多くいるというのだ。

 経済のプロの話も聞いてみた。四銀地域経済研究所の西本治史・調査部長は、女性の就業率の高さと高齢化に着目し、「留守番の子どもや移動が難しいお年寄りらに一定のニーズがあるのでは」と分析していた。

 かと思うと、工場近くの常連客の女性(62)は「ご夫婦が仲良さそうに作っている姿にひかれます」。ああ、そこですか。実に色々な魅力が出るものだ。そんなこんなをひと塊にして、甘く、香ばしく、あのパンが焼き上がるのだ。

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1732332 0 経済 2020/12/26 17:55:00 2020/12/26 19:08:38 2020/12/26 19:08:38 後日考えます https://www.yomiuri.co.jp/media/2020/12/20201226-OYT1I50034-T.jpg?type=thumbnail

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