コロナ直撃、中小企業の休廃業・解散5万件…「1年前には考えもしなかった」
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新型コロナウイルスの感染が拡大した昨年、企業が自ら事業をやめたり解散したりした件数が全国で5万件前後に達し、過去最多となる見通しになったことが東京商工リサーチのまとめでわかった。大半は中小企業で、地方経済の縮小も背景にある。2度目の緊急事態宣言により、休廃業などが加速する可能性もある。(石坂麻子、杉本和真)
「継がせられない」

「1年前には廃業なんて考えもしなかった」。昨年8月に営業を終えた浜松市天竜区の老舗旅館「松本屋」の4代目主人、松本典夫さん(67)はそう明かす。
創業は1877年(明治10年)。宝塚歌劇団の演出家が近くの出身だった縁で、多くのタカラジェンヌが訪れた。2000年代以降、地域の人口減などもあり、宴会需要が激減。「子どもに継がせられない」と考えるようになったが、営業は休まず続けてきた。
だが昨年春、例年は最も忙しい春先に新型コロナの感染拡大が直撃した。宴会予約が次々と取り消され、売り上げは前年比で約9割減。頭を抱えていた6月、古民家好きの知人から購入の打診があり、「今しかない」と廃業を決めた。松本さんは「子どもに旅館を残せば負の遺産になっていたと思う。売却先が見つかって幸運だった」と話す。
東京商工リサーチによると、昨年の企業の休廃業や解散は10月末までに4万3802件に上った。年間の件数では、00年の調査開始以降、最多だった18年の4万6724件を上回るのは確実で、5万件に迫る。