飲食減って苦境の「食品卸」に活路はあるか…コロナで生まれた新ビジネス
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新型コロナウイルスの感染拡大を受けた緊急事態宣言の再発令によって、営業時間を短縮した飲食店だけでなく、食材を納入する業者や生産者も打撃を受けている。苦境の中、移動販売やオンライン販売など、消費者に直接つながる販路を求め、様々な取り組みが進んでいる。
豊洲の水産仲卸、都心で初の移動販売
「このタイは身が厚いですよ。刺し身にいかがですか」。今月15日昼、東京・豊洲市場の水産仲卸「亀和商店」の和田一彦社長(58)は、港区の高層住宅前で車を止め、立ち寄った主婦らに声をかけていた。
後部の冷蔵冷凍陳列棚にはアジ、ブリ、生ガキが並び、鍋物用のタラやエビもそろう。近所に住む女性(70)は「市場直送なのでモノが違う。外食を控えている今、飲食店で出るような品が買えるのはうれしい」と満足げだった。

最初の緊急事態宣言が出た昨年4月、亀和商店の売り上げは前年同月比で7割減った。宣言解除後、徐々に回復していたが、感染が再拡大した11月頃から会食を控える人が増え、取引先の高級ホテルや料理店などからの注文が一気に減った。
先月上旬、特別な車両を約400万円で購入し、都心での移動販売を始めた。和田社長は言う。「初めての小売りだが、食べる人の顔が見えるので、手応えを感じる。我々が売れば、産地も魚を出荷できる」
ドライブスルーで感染も防止
ドライブスルー八百屋を開くのは、東京都大田区の青果卸売り「フードサプライ」。野菜や果物など約20種類のセット(3500円)が人気で、1日数百台が訪れることも。客は車に乗ったままトランクを開け、商品の入った段ボール箱を載せてもらうので、感染防止にもなる。
昨年4月に始めたが、外食産業などの景気が持ち直してきたため、11月末で終了した。だが、新年に緊急事態宣言が再発令されたため、都内や横浜市、大阪市の物流センターなどで再開した。
国は、緊急事態宣言下の飲食店と取引がある業者の売り上げが減った場合、中小事業者は上限40万円、個人事業主は上限20万円の一時金を支給する方針。
同社の竹川敦史社長(41)は「昨春より時短営業や休業に踏み切る取引先の飲食店が多い。国の支援はありがたいが、自分たちでコロナ禍を切り抜ける工夫も続けていきたい」と語った。