日本「質の高さ」で勝負、中国「低コスト」で攻勢…鉄道の受注競争激化
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【バンコク=山村英隆】東南アジアの大都市で、都市鉄道など社会基盤(インフラ)整備が急速に進み、受注競争が激化している。各国は、コロナ禍で落ち込む景気の浮揚策としてインフラ整備を拡大する構えで、大規模プロジェクトが増える可能性もある。ただ、中国企業が低価格で攻勢をかけており、「質の高さ」で勝負する日本企業が受注できるか正念場となっている。
開業相次ぐ
タイの首都バンコクで昨年12月中旬、日立製作所が車両製造を手がけ、2021年11月の開業を目指す都市鉄道「レッドライン」の試運転が行われた。視察したプラユット・チャンオーチャー首相は、「移動時間が短縮し、生活の質を向上させる」と述べた。
レッドラインを巡っては、三菱重工業や住友商事など多くの日本企業が関わる。拠点となる駅周辺でも、国際協力機構(JICA)や都市再生機構(UR)などが開発計画に参画し、スマートシティーの実証実験などが行われる予定だ。
バンコクでは20年12月に二つの都市鉄道の路線が延伸・開業しており、今後も路線の開業ラッシュが続く。
景気対策

東南アジアで鉄道建設が相次ぐのは、都市部の人口増で交通渋滞が深刻化し、経済への悪影響が懸念されることなども背景にある。慢性的な渋滞に悩まされるインドネシアの首都ジャカルタでは19年3月、清水建設など日本企業が工事や運営に関わった同国初の地下鉄が開業した。延伸計画も進んでいる。ベトナムでも、首都ハノイやホーチミンで都市鉄道計画が進行中だ。
インフラ投資は、コロナ禍で落ち込む景気の刺激策として、各国で拡大する可能性もある。フィリピンは21年度予算で、ロドリゴ・ドゥテルテ大統領が掲げるインフラ整備策「ビルド・ビルド・ビルド(造って、造って、造りまくれ)」の関連事業を含む部門に全体予算の約3割を割り当てた。
シンガポールも
ただ、受注競争は激しさを増している。ライバルの中国は、コスト面での安さを武器に国を挙げて受注獲得に力を入れる。スマートシティーの開発では、先端技術に強いシンガポール勢の存在感が増している。
海外の事業は、採算性が低かったり、政策が突然変わったりするなどのリスクがあり、中国に比べ日本企業の慎重さも目立つという。タイの案件に関わる日本の関係者は、「大規模事業のリスクを企業では負えない。リスクを分散させる仕組みが必要」と指摘する。