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30年前は「安い魚」だったのに…高知のカツオが「特別な存在」になった「契機」

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 「目には青葉 山ほととぎす 初鰹はつがつお」。この句のように視覚、触覚、味覚を刺激してやまない季節を迎えた。中でも旬の味を堪能する幸せは格別だ。高知に伝わるこの時期ならではの「食」。古くて新しい話を取材した。

スーパーの店内に出される新鮮なカツオの刺し身(高知市で)
スーパーの店内に出される新鮮なカツオの刺し身(高知市で)

 同じカツオが同じでない。「なぜ高知で食べるとおいしいの?」。県外の観光客が驚く。ごく身近なスーパーでも新鮮な刺し身やたたきに出会える。訳を知ろうと中土佐町に向かった。

久礼漁港に水揚げされた初ガツオ。仲買人らで活気づく(1日、高知県中土佐町で)
久礼漁港に水揚げされた初ガツオ。仲買人らで活気づく(1日、高知県中土佐町で)

 1日、久礼漁港の早朝。魚市場に一本釣りの初ガツオ約5トンが並ぶ。鮮魚店主や仲買人が少し怖い顔つきで品定めしていた。その中に「カツオソムリエ」を自称する田中隆博さん(60)がいた。高知カツオマイスターの一人だ。

 久礼大正町市場で創業約100年の「田中鮮魚店」の4代目社長。会社員を経てUターンしたのは1990年頃だった。当時、カツオは「安い魚」とみられていた。「昨日は硬くて食べれんかった」「カツオやきね」。そんな会話が飛び交っていた。

 変化はバブル景気がはじけた頃。町や商工会が「カツオで1番の町を目指す」と動き出した。「質の悪いものを出せば客が逃げる」。田中さんら鮮魚関係者の心も一つになった。

 競りの日に市場に通い、色目や体つきなど目利きに必要な感覚を磨いた。例えば尾っぽ近くの肉付き。この良しあしに目を光らせる。漁師から得た情報も重要だ。イワシを追うクジラに群がる「クジラ付き」と呼ばれる漁場では、イワシをよく食べ、よく動く。栄養も運動も行き届いていて、質がいいのだという。

 それでも「ゲジ」「ゴシ」と呼ばれ、5、6匹に1匹は身が硬く生臭さが残る個体がある。いわば「ハズレ」のカツオ。さばかないとわからないから怖いのだ。

 「中土佐や須崎市では特に舌が肥えちゅう。質の悪いものを出すと何を言われるか。失敗は許されんのよ」と力を込める。

 捕る人、売る人、食べる人。3者の力がこれほど高いレベルで保たれているのは、世界を見渡しても、高知のほかにない。

       ◇

 「高知はカツオの大消費地。全国からよりすぐりが集まる。東京・築地と同じ」

 スーパー、サンシャインチェーン本部営業本部生鮮商品部次長の寺川和孝さん(43)も「カツオは特別な存在。じゃけんにできんのです」と話す。県内を中心に水揚げしたものを短時間に店内に並べる特売日を設けている。

 県外産にも頼る。販売実績は全体の7割だ。これが侮れない。物流網の発達で三陸や中部、九州の港から2日後には高知市に届く。「いざ高知へ」。いい品は高く売れる場所を目指す。

       ◇

 高知カツオ県民会議会長代理の受田浩之・高知大副学長(食品科学)は「高知の人は子どもの頃から食べている。質の高い味覚が受け継がれ、品質も淘汰とうたされていく」と説明。一方で最近の課題も口にする。

 「熱帯海域で海外漁船が巻き網で乱獲しており、日本に北上するカツオが減少しないか心配だ。資源が脆弱ぜいじゃくになると、高知のカツオ文化が廃れる」

 10年後の高知のカツオが同じカツオとは限らない。(小野温久)

 ◆高知カツオマイスター=県内の有識者らによる高知カツオ県民会議が2019年2月に設けた称号で、一流の料理人を対象に認定する。長年の調理経験を生かした目利きができ、探究心を持って料理に精進する人に与える。登録者は県内外に175人(4月末現在)。

 ◆メモ◆総務省の家計調査(2人以上の世帯)によると、県庁所在市と政令指定都市の年間支出額(2018~20年の3年間を平均)は、高知市が7964円で、全国平均を5倍以上も上回り全国トップ。2位の仙台市とも倍以上の差。

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2053993 0 経済 2021/05/15 14:12:00 2021/05/15 14:12:00 2021/05/15 14:12:00 久礼漁港に水揚げされた初ガツオ。競りを前に仲買人らで活気づく(1日、中土佐町で) https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/05/20210515-OYT1I50050-T.jpg?type=thumbnail

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