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アルツハイマー新薬「売上高1000億円も」…エーザイCEO

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 エーザイは9日、アルツハイマー病の新薬「アデュカヌマブ」が米食品医薬品局(FDA)に承認されたことを受け、オンラインの説明会を開いた。内藤晴夫最高経営責任者(CEO)(73)は「ブロックバスター(年間売上高1000億円規模の大型新薬)になる潜在能力がある」と述べ、収益増への期待感を示した。

オンライン説明会に臨むエーザイの内藤CEO

 内藤氏は冒頭で「アルツハイマー病の最初の治療薬に至ったことに、感無量の思いだ」と喜びを語った。

 新薬は米製薬企業バイオジェンと共同開発した。昨年10月に欧州で、同12月には日本でも承認申請を行っている。アルツハイマー病の原因とされる物質を脳内から除去し、認知機能の低下を長期間抑えることを狙う世界初の薬だ。これまでは症状を一時的に改善する薬しかなく、効果も1年程度しか続かなかった。

 内藤氏は、新薬について「検査体制の充実に従って収益面での貢献が大きくなる」と述べた。新薬を投与するには、対象となる初期段階の患者を見分ける必要があるためだ。新薬の潜在患者数は日本に100万人、米国に100万~200万人いるとみられるという。

 認知症患者は世界で約5000万人に上り、6~7割をアルツハイマー病患者が占めるとされる。英調査会社エバリュエートは、5月時点で新薬の2026年の年間売上高が24億ドル(約2600億円)になるとの見通しを示していた。

 収益増への期待感から、9日の東京株式市場ではエーザイ株に買い注文が殺到した。終値は、前日に続き値幅制限の上限(ストップ高)にあたる前日比1504円高の1万755円と、年初来高値を更新した。

「低所得者も利用しやすく」

 ただ、FDAは追加の臨床試験で効果の再検証を求めている。結果次第で今後、承認が取り消される可能性がある。

 米国での薬剤費は、患者1人あたり年5万6000ドル(約610万円)となる見通しだ。日本では、開発・製造コストを反映した薬価を中央社会保険医療協議会(中医協)で議論して決める。患者が一部を負担し、残りは国が充当するため、高額薬は双方に大きな負担となる恐れがある。

 このため、内藤氏は「保険会社や金融機関などと提携し、低所得者層に対する革新的モデルを検討する」と述べ、幅広い層が新薬を利用できる仕組みを考える方針を示した。

 エーザイは、1983年に認知症の研究を始め、97年に進行を一時的に抑える治療薬「アリセプト」を米国で発売した。アリセプトの売り上げはピークの2010年3月期には3228億円に達し、これまでの研究の蓄積が新薬につながったという。

 現在は、認知症を含む神経領域とがん領域に経営資源を集中させている。

1941年設立、チョコラBB販売

エーザイ本社(9日、東京都文京区で)

 エーザイは1941年(昭和16年)、埼玉県本庄町(現・本庄市)で「日本衛材」として設立された。

 創業者は、内藤晴夫CEOの祖父・豊次とよじ氏。衛生兵の経験を生かして輸入薬販売を手がけ、製薬業に発展させた。エーザイの前身の一つ・桜ヶ岡研究所を設立し、日本初とされるビタミンE剤の開発に携わった。

 晴夫氏は創業家3代目で、1988年に40歳の若さで社長に就いた。連結従業員数は約1万1000人。売上収益の約9割を病院で処方される抗がん剤など医療用医薬品が占めるが、ビタミン剤「チョコラBB」や胃薬「サクロン」などの大衆薬も販売している。

 2021年3月期(国際会計基準)は、コロナ禍で受診を控える患者が増え、連結売上収益が前期比7・1%減の6459億円、最終利益が65・4%減の421億円で減収減益となった。売上収益は国内6位の規模だ。

 創業の地縁で、メインバンクは埼玉りそな銀行。持ち株会社・りそなホールディングスの東和浩会長が30歳代の頃、エーザイに出向するなど関係が深い。

 海外でも使われるロゴマークの表記は「Eisai」。Eizaiとしなかった理由は、「医療の本場であるドイツでは、『sai』を『ザイ』と発音するため」「zはアルファベット最後の文字で、終わりを意味するようで避けた」など社内でも諸説伝えられている。

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