読売新聞オンライン

メニュー

[スキャナー]「この10年で最も破壊的な産業変革だ」…中国ハイテク大手の自動車への傾斜

メモ入力
-最大400文字まで

完了しました

 中国のハイテク企業が電気自動車(EV)事業に相次いで参入している。脱炭素化を掲げる中国政府がEVの普及を推進し、各社は市場拡大に商機を見いだしている。業界の垣根を越えた競争は、自動車の業界地図を塗り替える可能性を秘める。(北京 小川直樹)

バイドゥ 自動運転車

ファーウェイ 技術提供

本業より注目

ファーウェイの「HI」ロゴが付いたEV「アークフォックスαS」
ファーウェイの「HI」ロゴが付いたEV「アークフォックスαS」
バイドゥが発表した自動運転EV「アポロ・ムーン」(同社提供)
バイドゥが発表した自動運転EV「アポロ・ムーン」(同社提供)

 中国インターネット検索大手・百度(バイドゥ)は17日、北京で新車発表会を開いた。披露したのはライドシェア向け自動運転EV「アポロ・ムーン」。中国自動車大手・北京汽車集団傘下メーカーと共同開発したもので、最新の自動運転技術で無人運転ができ、コストも他社の3分の1となる48万元(約820万円)に抑えたという。

 バイドゥは近年、人工知能(AI)分野に力を入れており、自動運転の開発連合もリードする。3月には中国自動車大手・浙江吉利控股集団と組んで自らEVメーカー「集度汽車」を設立した。最近注目を集める話題は、ネット検索より車の方が多い。

 通信機器大手・華為技術(ファーウェイ)も自動車事業の強化に動く。「HI(ファーウェイ・インサイド)」戦略だ。

 車は作らないが、通信やセンサー、自動運転システムなど基幹技術をメーカーに提供し、搭載車には「HI」のロゴを付ける。米インテルが自社製半導体を搭載したパソコンメーカーに「インテル・インサイド」のシールを製品に貼るように求め、業界で圧倒的な地位を占めた姿と重なる。

25年に「20%前後」

DJIが上汽通用五菱汽車と共同開発した試作EV
DJIが上汽通用五菱汽車と共同開発した試作EV

 中国以外でも、ソニーグループが新型EVを披露するなど異業種参入のケースはある。米アップルもEV参入が取りざたされている。

 だが、中国ハイテク大手の自動車産業への傾斜は群を抜く。

 昨秋から今年前半にかけて、IT大手のアリババ集団やスマートフォン大手の小米科技(シャオミ)、配車サービス大手の滴滴出行(ディディチューシン)、ドローン大手のDJIなどが相次いで名乗りを上げた。

 背景には、中国EV市場の成長への期待がある。

 中国自動車工業協会によると、2020年のEVなど「新エネルギー車」の新車販売台数は137万台。新車市場全体に占める割合は5%だったが、中国政府は25年に20%前後へ高める計画を掲げる。

 政府は中国をEV大国に押し上げた補助金政策を22年末に終了する予定だが、ガソリン車より安いEVも販売されている。協会幹部は「今後5年間の成長率は40%以上を保つ」と予測する。25年の新車市場の規模が3000万台になれば、中国の新エネ車は日本の新車市場を超えて600万台市場になる。

強気

 中国政府がEV普及を進めるのは、脱炭素化も狙いだ。 習近平シージンピン 国家主席は30年までに二酸化炭素排出量を減少に転じさせると表明した。EV化の流れは変わらないとの見方が、強気なシナリオへの説得力を持たせている。

 車の競争領域も変化している。これまではエンジンなど機械系の技術が競争力の要だったが、自動運転などのソフト分野への移行が進む。

 中国では従来型携帯電話からスマホへの移行が進んだ10年代前半と重ねる見方が多い。従来型の時代には存在感が薄かった中国のスマホメーカーは現在、世界を席巻しており、「自動車強国」実現に向けた千載一遇のチャンスと映る。

 自動車産業を巡り、ファーウェイの 徐直軍シュージージュン 副会長は「10年以内に見られる最も破壊的な産業変革だ」と指摘する。

「水平分業」得意分野に特化

 ハイテク企業の参入ラッシュで加速しそうなのが、自動車産業の水平分業化だ。

 「水平分業は、ソフトとハードの開発の複雑度を下げることができる」。中国自動車工業協会の 葉盛基イエションジー 副事務総長は19日の講演で強調した。水平分業は、製品の核となる部分だけ自社で担い、製造などは他社に委託するビジネスモデルを指す。役割分担した各企業が得意分野に特化することで、効率的に事業展開できるのが特長とされる。半導体やパソコン、スマホなどで広がった。

 先行するのが台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業だ。20年10月に「MIH」と称するEV用の車台を開発し、受託製造に乗り出す方針を表明。中国や欧米大手、米中の新興メーカーなどと相次いで提携した。米アップルのiPhone(アイフォーン)の受託製造で成功した体験の再現を狙う。

 自動車産業は、トヨタ自動車など大手メーカーが研究開発から商品企画、設計、製造を自前で手がける「垂直統合」型の産業の代表格で、米EV大手テスラも同様だ。業界では「人命を預かる自動車はパソコンとは違う。系列の部品供給元との綿密なすり合わせが欠かせない」(自動車メーカー幹部)との見方も根強い。

 しかし、水平分業化の流れに乗り遅れた日本の半導体や電機メーカーは競争力を失った。「世界の工場」での変化は世界の自動車メーカーを揺さぶる可能性がある。

無断転載・複製を禁じます
2140708 0 経済 2021/06/21 05:00:00 2021/06/21 05:06:47 2021/06/21 05:06:47 https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/06/20210620-OYT1I50084-T.jpg?type=thumbnail

ピックアップ

読売新聞購読申し込み

読売IDのご登録でもっと便利に

一般会員登録はこちら(無料)