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銅冶勇人さん 「
CLOUDY
」代表
アフリカのプリント生地などを使ったカラフルな柄で注目を集めるアパレルブランド「CLOUDY」。代表の銅冶勇人さん(35)は、外資系証券マンのキャリアを捨て、アフリカの女性たちに雇用の場を、とブランドを設立した。売り上げの一部を教育支援にも充てている。原点は、大学時代に訪れたスラムで見た光景だという。(生活部 梶彩夏)

- どうや・ゆうと
1985年、東京都生まれ。2008年、慶応大卒業。10年に設立したNPO法人の名称は「
Doooooooo 」。「とにかくアクションを起こしていく」という思いを込めた。
色鮮やかでエネルギッシュな生地
黄色、青、ピンク――。色鮮やかでエネルギッシュな生地を使ったワンピースやTシャツ、ポーチ、巾着、手編みのかごバッグなどは、デザインもスタイリッシュで印象的だ。大手セレクトショップや有名ブランドなどと協業した商品も多い。「『支援するために買う』ではなく、『欲しいから』と思ってもらえるものでなければ」と語る。
ガーナ製の生地などを使い、同国に5か所ある自社工場で、現地雇用の女性や障害者ら約500人がミシンなどで縫製している。「元々、地域の生活や文化に根差した手仕事だからこそ、ビジネスとして継続していける」。多い時は一年の半分をアフリカで過ごし、社員とのコミュニケーションも欠かさない。
日本だけでなく欧米などでの販売も視野に入れている。デザイナーをアフリカで採用し、ブランドオリジナルの柄を創る準備も進める。現地出身で国際的な評価を得られるデザイナーが生まれてほしい、という願いがある。
ナイロビのスラムで見た光景が原点

大学時代はアメリカンフットボール部に所属。卒業後、ゴールドマン・サックス証券に入社したが、1年目は苦労の連続だったという。「金融用語や苦手な英語が飛び交っていて、何を言っているのか理解できない。パソコンの操作もおぼつかない。何もできない自分が情けなかった」と振り返る。
このつらい時期に、支えになったのがアフリカへの思いだった。大学の卒業旅行でケニアのマサイ族の家にホームステイし、帰国前に首都ナイロビのスラム「キベラスラム」を訪れた時のこと。トイレが足りず、至る所に人ぷんが捨てられた不衛生な環境下で子供が物乞いするなど、見たことがない空間が広がっていた。「何か行動を起こさないと」と、人生の課題を突き付けられた気がした。
「それに比べれば、自分には家族も友人もいて、仕事もあって、ご飯も食べられる。恵まれた環境がある」。証券会社での仕事を何とか踏ん張り、現地で支援活動をしている日本人へ寄付金を送り続けた。