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【ロンドン=池田晋一、ブリュッセル=畠山朋子】欧州連合(EU)は14日、2035年までにガソリン車やディーゼル車などの販売を事実上禁止する方針を打ち出した。日米など主要国よりも規制を一段と強め、温室効果ガスの排出削減に向けたルール作りを主導する。
欧州先行
「多くのメーカーがすでに(電気自動車などへの)切り替えを進めているが、我々はさらに電池などへの投資を進める」
EUの執行機関・欧州委員会のウルズラ・フォンデアライエン委員長は14日の記者会見で、自動車の規制強化に自信を見せた。欧州では、英国が30年、フランスが40年にガソリン車の販売を禁止する方針を明らかにしているが、EU全体の目標設定は初となる。
すでに主要メーカーは30年に照準を合わせ、対策を強化している。独フォルクスワーゲン(VW)は30年までに電気自動車(EV)用の電池工場を欧州に6か所建設し、スウェーデンのボルボ・カーも同年までにEV専業メーカーに転換する方針を示している。
EV転換加速
一方、日本自動車販売協会連合会によると、日本で昨年販売されたEVは1万4604台で、新車販売台数の1%に満たない。国内大手はこれまで、ガソリン車やハイブリッド車(HV)を主力に販売してきたが、新たな車種の開発・生産を迫られることになる。
欧州は日本の自動車メーカーにとっては米国、中国に次ぐ重要市場だ。日本自動車工業会によると、日本からEU向けの自動車輸出台数は、約67万台(トラック、バス含む)。このほかトヨタ自動車や日産自動車といった大手メーカーは欧州で生産・販売を手がけている。
日産自動車が英国などでEVを生産しているほか、ホンダが40年までにEVと燃料電池車(FCV)の販売比率を100%にする目標を掲げている。日産は今月1日、電池メーカーなどと協力し、英中部サンダーランドでEV、電池生産に10億ポンド(約1500億円)を新たに投資する計画を発表した。EVへの転換を一段と加速させる狙いだが、日本勢全体で見れば、欧州メーカーに比べて取り組みの遅れが目立つ。今後はEVの本格的な開発、生産体制を築かなければ、欧州市場でのシェア(占有率)を落としかねない。
摩擦も
一方、EUが目指す35年のガソリン車の販売禁止が実現するか、不透明感も強い。
中国やアジアの新興国ではガソリン車の需要が根強い。世界各地でガソリン車やHVを生産、販売する日系メーカーにとっては、EVへの急な転換は困難との見方もある。
今回の気候変動対策には、炭素国境調整措置(CBAM)なども含まれており、他国との摩擦が避けられない。