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「見切り発車」の再エネ拡大計画、用地確保など課題

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 政府は新しいエネルギー基本計画の原案で、再生可能エネルギーの拡大を国が先導する姿勢を強調した。当面の目標となる2030年度まで10年を切っており、必要な用地の確保や、電気料金の上昇をいかに抑えるかなど、課題の解決に向けた道筋を早急に示す必要がある。

■蓄電池

 政府が再生エネ拡大の柱に据えたのが太陽光だ。経済産業省は21日、発電量を2019年度の690億キロ・ワット時から30年度には約1400億キロ・ワット時と2倍に増やす方針を明らかにした。太陽光発電のパネルを公共施設の屋根に設置したり、荒廃農地を活用したりして、導入拡大を目指す。

再生エネ拡大の柱となる太陽光発電(長崎県佐世保市の佐世保メガソーラー発電所で)=九電みらいエナジー提供
再生エネ拡大の柱となる太陽光発電(長崎県佐世保市の佐世保メガソーラー発電所で)=九電みらいエナジー提供

 再生エネ活用の「切り札」と位置づける風力も19年度の76億キロ・ワット時から約560億キロ・ワット時へと大幅増を見込む。計画では、長期化している環境影響評価(アセスメント)の期間短縮や、地元との調整に国が積極的に関与する姿勢を強調した。

 再生エネは天候により発電量が左右される。計画では、発電量の減少に備え、電力をためておける蓄電池の普及を進める方針も掲げた。

 家庭用蓄電システムのコストは日本が1キロ・ワット時あたり14万円。米カリフォルニア州の7・9万円や、豪州の9・3万円と比べて高止まりしている。停電が少ない日本では、蓄電システムへのニーズが小さいためだ。政府は低価格化につながる事業に補助金を出すなどしてコスト削減を後押しする。

■逆算

 総発電量に占める電源別の比率は、太陽光が19年度の7%から30年度に15%程度と2倍になり、風力は0・7%から6%程度に上昇する計算だ。菅首相が掲げる、30年度までに温室効果ガス排出量を13年度比で46%削減するとの目標から逆算した数字で、「見切り発車」の側面は否めない。

 国土面積の狭い日本では、太陽光や風力の適地が限られる。自然環境や景観が損なわれるとの懸念から、設置を規制する条例の制定が全国で相次いでいる。潜在能力が世界第3位とされる地熱発電も、自然公園内に対象エリアがあることが多く、開発が見通せない。

 再生エネの割合が増えることで、電気料金がさらに上昇する恐れもある。

 電力中央研究所の調査では、日本の19年の電気料金は、福島第一原子力発電所の事故前の10年比で、家庭向けが26%、産業向けが32%上昇した。原発の運転停止に伴って火力発電所用の燃料費が増加し、国が決めた価格で電力会社が再生エネによる電力を買い取る「固定価格買い取り制度(FIT)」の費用も膨らんだ。

 同研究所の筒井美樹氏は、「今後は、再生エネの普及で、送配電網の強化が必要になる。燃料費が安い石炭火力の稼働減も見込まれ、電気料金のさらなる上昇につながる要因が多い」と指摘する。

■原発

 計画で引き続きベースロード(基幹)電源と位置づけた原子力の発電量は、30年度に1900億~2000億キロ・ワット時を見込む。再稼働済みの10基に加え、申請中の17基を合わせた計27基の原発が全て稼働する必要がある。

 11年の福島第一原発事故の反省から、再稼働の審査は厳格化されている。北海道電力の泊原発は申請から8年以上、中部電力の浜岡原発(静岡県)は6年以上が経過しているが、いまだに審査が終わっていない。認可後の地元同意の壁はさらに高い。

 米国や中国では、次世代原発として、安全性を高めた小型原発の技術開発が進む。日本は計画で、小型原子炉や高温ガス炉などの技術開発に注力するとしたが、原発の新増設や建て替えの方針は明記しなかった。「新増設の明確な方針がなければ、事業者が投資計画を進められない」(電力関係者)との指摘も出ている。

エネルギー基本計画原案の要旨

 【気候変動への対応】

 気候変動問題への対応のカギを握るのは、エネルギーの需給構造の変革。エネルギー分野は温室効果ガス排出の8割以上を占める。エネルギーの脱炭素化に取り組むことは国の責務だ。

 【再生可能エネルギー】

 2050年のカーボンニュートラルの実現に向け、主力電源として最大限の導入に取り組む。発電コストは着実に低減が進んでいるものの、国際水準と比較して依然高い。コストを他の電源と比較して競争力ある水準まで低減し、自立的に導入が進む状態を実現する。

 太陽光は、自然環境や景観の保全を目的として、設置に抑制的な条例の制定が増加するなど制約が大きくなっている。導入拡大には地域での前向きな合意形成を促し、適地の確保を進めることが重要。蓄電池との組み合わせで長期安定的な電源として成熟していくことが期待される。

 洋上風力は大量導入やコスト低減が可能で、経済波及効果が大きいことから、再生エネ主力電源化の切り札として推進していく。

 【原子力】

 優れた安定供給性と効率性を有しており、長期的なエネルギー需給構造の安定性に寄与する重要なベースロード電源。安全性を全てに優先させ、原子力規制委員会の規制基準に適合すると認められた場合には、再稼働を進める。国も前面に立ち、立地自治体関係者の理解と協力を得るよう取り組む。

 【火力】

 再生エネの発電量低下にも対応可能な設備容量を確保しつつ、比率を下げていくことが基本。カーボンニュートラルの実現に向けて、火力発電から大気に排出される二酸化炭素(CO2)排出を実質ゼロにしていくという抜本的な転換を進めることが必要。燃料そのものを水素・アンモニアに転換させる、または排出されるCO2を回収・貯留・再利用することで脱炭素化を図ることが求められる。

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2226128 1 経済 2021/07/22 05:00:00 2021/07/22 20:54:52 2021/07/22 20:54:52 最大の導入量を見込む太陽光発電(長崎県佐世保市の佐世保メガソーラー発電所で)=九電みらいエナジー提供撮影 https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/07/20210722-OYT1I50012-T.jpg?type=thumbnail

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