「障害者のイメージ変えたい」…双子が仕掛けるアート・ビジネス

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松田崇弥さん・文登さん「ヘラルボニー」社長・副社長

 知的障害のあるアーティストと契約し、彼らの作品を活用したビジネスで注目されるベンチャー企業「ヘラルボニー」(盛岡市)。自由な着想と鮮やかな色彩の商品は、従来の障害者福祉の枠を超え、流行に敏感な若者から支持を集める。双子の経営者、社長の松田崇弥さん(30)、副社長の文登さん(30)の原動力は「障害者のイメージを変えたい」という強い意志だ。(医療部 安藤奈々)

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弟の松田崇弥さん(右)と、兄の文登さん=写真はいずれも佐藤俊和撮影
弟の松田崇弥さん(右)と、兄の文登さん=写真はいずれも佐藤俊和撮影

    まつだ・たかや ふみと  1991年生まれ、岩手県金ヶ崎町出身の双子。2019年、雑誌「フォーブス ジャパン」の「世界を変える30歳未満の30人」に選ばれる。弟・崇弥さんが東京拠点で企画部門を担当。兄・文登さんは盛岡市の本社で営業を統括する。

 「知的障害。その、ひとくくりの言葉の中にも、無数の個性がある。『普通』じゃない、ということ。それは同時に、可能性だと思う」。商品に添えられたカードには、そんな言葉が載っている。大胆な色づかい、 緻密(ちみつ) に描き込まれた幾何学模様の世界――。目を引くデザインの数々は、その可能性を物語る。

創立3周年記念の展覧会に並ぶ作品
創立3周年記念の展覧会に並ぶ作品

 7月に創立3周年を迎えた同社は、アーティストの所属する全国23の福祉施設と、個人14人とライセンス契約を締結。2000点以上の作品データを使って絵柄に取り入れ、ネクタイや傘、スカーフとして商品化し、オンラインストアや百貨店内の期間限定店舗などで販売している。4月には盛岡市に原画の販売も行うギャラリーをオープンした。

誰も知らない「ヘラルボニー」の意味

 社名に採った「ヘラルボニー」という言葉の意味は、誰も知らない。2人の兄、翔太さん(33)が幼い頃、繰り返し自由帳に書いていた言葉だ。本人に意味を尋ねても「わからない」というが、「兄が僕らの原点」という思いから社名に決めた。

2人の兄の翔太さんがノートに記した「ヘラルボニー」の文字
2人の兄の翔太さんがノートに記した「ヘラルボニー」の文字

 翔太さんは自閉症で、重い知的障害がある。家では「普通の兄貴」が、外に出れば「かわいそう」と言われる。障害者をからかう同級生の言葉を耳にし、翔太さんと一緒にいることをためらう時期もあった。葛藤を繰り返しながらも、社会の偏見への怒りや悲しみが2人の心から消えることはなかった。

壮大かつ斬新…「もっと世の中に広めたい」

 そんな思いが起業に結びついたのは偶然だった。広告会社で働き出して2年目の夏、帰郷した崇弥さんは、母の誘いで知的障害のある作家のアートを扱う「るんびにい美術館」(岩手県花巻市)を訪れた。記号のようなモチーフが繰り返し描かれ、大きな一つの絵となる。壮大さと斬新さに圧倒された。「もっと世の中に広めたい」。崇弥さんは文登さんに電話し、「一緒に何かやらないか」と呼びかけた。

 文登さんも共感し、2016年、友人とともに副業でファッションブランドをつくり、シルクネクタイを作った。価格は約2万円。値段は気にせず、最高品質の物を目指した。「障害者の作る物は安い」。そのイメージを変えたかった。

 当初は製造に協力してくれる企業がなかなか見つからなかった。メールは無視され、電話は切られた。ようやく会ってもらえることになっても、5分で打ち切られることさえあった。

 それでも、「この作品たちを世に出す意義が絶対にある」。信念は揺るがなかった。18年にはヘラルボニーを設立。「本当にやりたい仕事」に専念しようと、勤めていた会社をそろって辞めた。

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