役所の広報がらりと変えた男…「こんなことしていいの?」議論のきっかけに

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白石優生さん 官僚ユーチューバー

 「官僚ユーチューバー」と呼ばれる人がいる。農林水産省広報室の白石優生さん(24)。昨年1月に始まった農水省公式ユーチューブ「BUZZ MAFF(バズマフ)」を運営し、自ら出演もして、人気チャンネルに育てた。とかく真面目になりがちな「霞が関」の情報発信を、3年目の柔らかな頭で改革しようと奮闘している。(地方部 宮下悠樹)

漁で使った縄がジャケットに変身…「地域アピールの機会にも」
園田寛志郎撮影
園田寛志郎撮影
    しらいし・ゆうせい  1997年、鹿児島県生まれ。鹿児島大法文学部を卒業後、2019年に農林水産省に入省。今年度、九州農政局(熊本市)から東京の霞が関にある本省広報室に異動した。

農水省公式ユーチューブ運営、登録13万人

 「官僚ユーチューバー」と呼ばれる人がいる。農林水産省広報室の白石優生さん(24)。昨年1月に始まった農水省公式ユーチューブ「BUZZ MAFF(バズマフ)」を運営し、自ら出演もして、人気チャンネルに育てた。とかく真面目になりがちな「霞が関」の情報発信を、3年目の柔らかな頭で改革しようと奮闘している。(地方部 宮下悠樹)

 「皆さんこんにちは、農林水産省の白石です」。コメのPRや植物のクイズ、鳥インフルエンザの啓発――手書きのイラストで作った紙芝居で、政策や業務の実情を紹介する。バズマフの撮影の一場面だ。企画や撮影、編集はすべて担当者自らが行う。省内の裏話を紹介する動画「農林水産省あるある」や、副大臣との大喜利などユーモアあふれる動画を発信してきた。

紙芝居を使って、農水省の施策を説明する
紙芝居を使って、農水省の施策を説明する

 登録者数は、人気チャンネルの指標「10万人」を9月下旬に突破し、今では13万人に上る。行政の広報は批判を受けまいとするため、「難しい、面白くない、(担当者が)顔出さない、という三つの特徴がある」と分析。「バズマフ」はその逆をついた。「官僚という堅いイメージとのギャップや、『公務員がこんなことしていいの?』という議論の機会になったことが、注目された原因だと思います」と振り返る。

元体育祭の応援団長、先輩とタッグ

 桜島の灰が降る鹿児島県姶良市で育った。鹿児島大学で農業地理を学び、農水省に入り、九州農政局(熊本市)に配属された。国の支援策を紹介して回る営業のような仕事で、農家や漁師との交流も多く、「1次産業の人たちの思いやこだわりを多くの人に伝えたい」と考えていた。

「カメラマンをお願いします」とだまして誘ったという野田さん(右)。白石さんとの掛け合いは、今やコンテンツのウリだ
「カメラマンをお願いします」とだまして誘ったという野田さん(右)。白石さんとの掛け合いは、今やコンテンツのウリだ

 転機は1年目の秋に訪れた。当時の江藤拓農相が「若い人に見てもらえるユーチューブをやろう」と号令をかけ、出演者が募集された。もともと目立ちたがりの性格で、中学や高校で体育祭の応援団長を務めたこともあった。周囲は戸惑い気味だったが、「面白そうだ」と手を挙げた。一つ上の先輩だった野田広宣さん(28)と「タガヤセキュウシュウ」というコンビを結成。2020年1月、他の農政局のチームなどとともに、同省の英語名(Ministry of Agriculture, Forestry and Fisheries)の略称を入れた「バズマフ」で配信を始めた。コンビ名は、九州の農業を発展させるという意味を込めて、「耕せ」にした。

インパクトとわかりやすさ重視「編集はへたくそでいい」

 注目はすぐに集まった。3月、コロナ禍による式典の中止で売れなくなった花の需要拡大を訴える動画をアップした。花の魅力をまじめに淡々と語るだけの動画だが、カットが変わるたびに机の上の花が増え、最後に見えているのは、ほぼ顔と花だけ。シュールさが受け、登録者は2000人から4万人まで増えた。今春、本省の広報室へ異動。演者に加えて、全体の運用担当者となった。

 動画作りで重視しているのが、動画の内容をまとめた「表紙」に当たるサムネイル画像だ。視聴するかどうかの判断材料になるので、インパクトとわかりやすさを大事にする。宣伝色を強くしないこと。「わざわざCMを見に来る人はいませんから」。「編集はへたくそでいい。おもしろさや動画の質を求めるなら、テレビのバラエティー番組がある」と言い切る。食べ物や森林という農水省の担当分野が、動画映えが求められるユーチューブと相性がよいことも強みだ。

 あえて情報は絞り込む。「あれもこれも入れると、わかりづらくて誰も見ない。情報量が乏しくても、何万回も再生されれば価値があがる」。もちろん統計の数値などは農水省の担当課が必ずチェックする。子どもがまねしたらいけないことや、著作権上問題のあることもしないようにしている。「国のチャンネルですから厳密にやっています」

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2632836 0 経済 2021/12/27 15:00:00 2021/12/27 15:00:00 2021/12/27 15:00:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/12/20211221-OYT8I50081-T.jpg?type=thumbnail

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