地球を救う?「食用コオロギ」…大学発ベンチャーが製品開発

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 昨年12月、生活雑貨店「無印良品」を展開する良品計画(東京)が発売したチョコレート商品が注目を集めた。その名は「コオロギチョコ」。原料は徳島大発のベンチャー企業「グリラス」(徳島県鳴門市)が供給するコオロギパウダーだ。同社は、2019年の設立から短期間で、日本の「昆虫食」業界を 牽引けんいん する存在に成長しつつある。

昆虫食は始まったばかり。もっと浸透させたい」と話す渡辺さん(徳島県鳴門市で)
昆虫食は始まったばかり。もっと浸透させたい」と話す渡辺さん(徳島県鳴門市で)

 最高経営責任者(CEO)で徳島大助教の渡辺崇人さん(37)はとりたてて、昆虫好きの少年だったわけではない。大学の研究室で、実験用のコオロギに出会ったのがなれ初めだ。

 16年、徳島大に「生物資源産業学部」が新設された。同じ頃、大学ではクラウドファンディング(CF)で研究費を獲得する動きが始まっていた。自分たちの研究を広めたいと考える中、「『産業』を名乗る学部なのだから、コオロギを産業に使ったらどうだろう」と思いついた。

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 注目したのが「食」だ。ちょうど13年に、国連食糧農業機関が将来の食糧難を見据えて、昆虫食を食料源の一つに提示した。昆虫は栄養価が高く、家畜よりも飼料が少なく済んで、温室効果ガスの排出も抑えられる。SDGsの考えが広まる欧米ではブームになりつつあったが、日本では下手物の印象が根強かった。

 周りからは昆虫食を疑問視する声も聞こえた。それでも、コオロギを食用に生産するシステムの開発費用をCFで募ると、目標を上回る資金が集まった。

 反響は大きく、食品関連の企業や化学メーカー、さらには電力会社から問い合わせが舞い込んだ。サンプルとしてパウダーを提供したが、結局は企業側が二の足を踏み、食用化の取り組みにつながらなかった。

 「前例がないから」「昆虫食が広まるか分からない」と事業化に踏み切れない企業の姿に、覚悟を決めた。

 「会社をつくって、自分たちがまずやろう」

 19年、グリラスを設立し、昆虫食への「本気度」を示した。翌年には良品計画との協業で、同社の昆虫食第1弾となる「コオロギせんべい」が発売され、ヒット商品となった。21年からは自社ブランドでクッキーやチョコクランチ、レトルトカレーなどの販売にも乗り出した。

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コオロギパウダーや乾燥させたコオロギの味を楽しめるパスタ(徳島県東みよし町で)
コオロギパウダーや乾燥させたコオロギの味を楽しめるパスタ(徳島県東みよし町で)

 徳島でも昆虫食が広がりつつある。東みよし町加茂の「みかも喫茶」の人気メニューは、コオロギのエキスやパウダーをかけたソフトクリームや、旬の野菜とコオロギを楽しめるパスタだ。オーナーの金村盟さん(49)は「エビのようなうま味を感じられて使いやすい」と話す。

 北島町鯛浜の「中華そば 田村」は昨年4月、エキスをスープなどに入れたみそラーメンを期間限定で始めると、多い日に40杯ほどが出た。提供を終えた今も、トッピングの具材に乾燥コオロギやパウダーを用意する。店主の田村佳久さん(51)は、小麦など食材が高騰したのをきっかけに、環境問題や食糧危機に関心を持つようになった。「コオロギを食べて、地球規模の問題を考えるきっかけになれば」と願う。

 県立城南高校の生徒たちは、県産かんきつ「ゆこう」の皮を混ぜた餌でコオロギを育てる研究に取り組んだ。試行錯誤の末に、コオロギに含まれるビタミンCの量が増えるのを確認できた。

 「さらに応用して、栄養豊富なコオロギをつくることができるかも」と3年の杉本 美樹みじゅ さん(18)。使い道がなかった物を活用して栄養価を高める“ご当地コオロギ”の可能性に期待が膨らむ。

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 この数年間で昆虫食の認知度は高まった。だが、渡辺さんは環境に配慮した新しい食文化を根付かせようと、さらなる高みを目指す。「食品製造の過程で活用されずにいた物を餌にコオロギを育てて、食糧難の地域に届ける。そんな循環をつくりたい。コオロギを、地球規模で持続可能な食材にすることが目標です」(坂下結子)

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2652341 0 経済 2022/01/06 06:38:00 2022/01/06 06:38:00 2022/01/06 06:38:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2022/01/20220105-OYT1I50111-T.jpg?type=thumbnail

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